さらば、吉野家の牛丼。

2004/02/11 01:37 Written by

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こんにちは、元吉野家店長代行バイトのエアロプレインです。吉野家の牛丼がなくなるにあたり、自サイトにも置きました文章を転載させていただきます(了承済み)。

― 吉野家から牛丼が消える―

去年から言われてはいたけれど、本当にこの日が来るとは思わなかった。元店員としてあまりにも感慨深く、今日食した最後の牛丼はなんだか切ない味がした。最後なのに並ではなく大盛、味噌汁ではなくけんちんを頼んでしまったとこがなんとも失敗である。

そういえば今日はあまりの混み具合に、いつもはイマイチな牛丼を出す店もウマイ牛丼を提供していた。吉野家はその作り置きシステム上、一定の人数で適度に込み合う時間帯が一番うまい。朝であれば8時ごろ、昼ならば13時ごろ、夜なら9時ごろがオススメだ。また、店舗で言うならば赤羽駅構内の吉野家が最強であろう。オープン当初から店員の異常なレベルに驚いたが、今もほぼそのクオリティを保っているのは素晴らしい。肉の色が黒っぽい牛丼は煮すぎであり、肉に色がついていない牛丼は作りたてすぎである。肉の色に注目されたし。

最近知ったのだが、牛鮭やA定・特朝の鮭を本当に焼いていると思っている人がいるらしい。あれは焼いてある(?)鮭が冷凍パックで送られてくるので、それを湯煎しているだけだ。たまーにお湯につけすぎの鮭が発生し、パサパサしてしまうのはご愛嬌である。この鮭の袋を開ける方法に各店工夫が凝らされていたりするのも面白いところである。ある店はキッチンバサミ、ある店は固定カッターナイフ、ある店はまた別のもの・・・スピード提供に命をかける吉野家ならではである。

また、味噌汁が何の味噌汁か知らない人も多いと聞いた。あれはシジミ風味なので覚えておいてほしい。某店には、ご飯に味噌汁・玉子・ネギをぶっかける「おじや」なる違反メニューがあったことも記しておく。ちなみにバイト店員(キャスト)は、味噌汁をこっそり隠れて飲み始める頃からいろいろなことにチャレンジし始めるようだ。そして、初めて自分のまかないを盛る店員は、たいてい肉ダクにしたがる。これも法則であろう。

この肉盛りであるが、なかなか難しいのをご存知であろうか。丸いお玉で鍋からうまく牛丼をすくうのは難しい。とくに丼に合わせて丸く型づくらなければいけないところで、たいていの初心者ははまってしまう。これは要鍛錬である。鍛錬といえば吉野家は全ての重量を体で覚えねばならない。店長代行レベルになると、10グラム単位で重さが分かるようになる。飯盛りは2動作で構成されており、マスターすれば何度やってもほぼ同じ重量・同じ形で盛ることができるようになる。こんな職人的技術を要するところも、吉野家の味のひとつかもしれない。店員は知らず知らずのうちに技術を追い求め、美味しい牛丼を追及し始める。吉野家は職人技によって作られてきたのだ。

今回の牛丼休止で懸念されるのは、タレ味の低下である。吉野家の牛丼のタレは継ぎ足し継ぎ足しで使われており、古い店であればあるほどタレには深い味があるという。それでなくても、新規店舗立ち上げに立ち会ったことがある僕は、タレ味を安定させるのが如何に難しいかを知っている。もし牛丼が再開されても、しばらくは様子を見るのが妥当であろう。また、牛丼のタレは2種類存在するのをご存知であろうか。繁盛店は通常のタレを使っているが、不況店は煮詰まらない通称「生タレ」を使っているため、多少味が落ちる。最初にも書いたが、牛丼を食べるなら適度な繁盛店で適度な入客時に食べるのがオススメである。

こうやって書いてみると、吉野家はやはり奥が深い。しばらく牛丼が食べられなくなってしまうことは、本当に残念だ・・・。ちなみに、以前さいたま市の16号東大宮店で勤務していたので、もしかしたら僕の牛丼食べたことある人がいたかもね。あと玉子をギョクって頼むのは、本当に恥ずかしいからやめたほうが良いでしょう。店員に笑われてますぞ。

さぁ、吉野家の牛丼としばしのお別れです。


追記:そうか、分かった。今回の「しばしのお別れイベント」は、全ての店を適度に混雑させ(いや、混雑しすぎ?)、最後に美味しい牛丼を食べさせよう!という誰かの意志が働いたんだ。きっとそうだ。そのおかげで、今日明日は全国的に美味しい牛丼が食べられるはずだから・・・。

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