日本人による中国ドキュメンタリー映画『延安の娘』。

2003/12/04 04:20 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


ドキュメンタリーっていいですよね。なんてったって本物なんですから(ヤラセのときもあるけど)。作り物じゃない物語というのは、胸にグッときちゃう。しかし、これを異国の地、しかも現在でもすべてを開放していない(政府も民心も)中国で日本人が撮るってのは、相当な努力が必要なのだ。池谷薫監督も、2年間中国で取材を続けてようやっと現地の人々が心を開いてくれたそう。

さて、この映画の主題はズバリ「下放(かほう)」。下放? 牛や羊を上の牧場から下の牧場に移すことか? なんて妄想をしていました。無知はいやだわ。鞭は罰、無知は罪、ムチムチはオレ好みです。「下放政策」ってのは、都市に住む若者を農村に派遣して労働に従事させる政治運動だそうで、1960年代〜70年代の文化大革命のころに下放された人たちを、現在の中国では「老三届(ラオサンジェ)」と呼んでいるそうな。んで、この老三届たちは、若い頃に文革のために勉強できず、農業にいそしんでいたので専門知識も身に付けられなかったから、都市に帰ってそりゃあもう、ヒドイ扱いを受けていたそうなのだ。そして、老三届たちは50代になり、世間から忘れ去られようとしているという。

この映画の(一応の)主人公は、老三届たちが下放先で産み捨てた子供なのである。下放先では恋愛は御法度。見つかったら「反革命罪」なるものを適用されて罰せられるという。主人公の両親は、泣く泣く生まれた子供を置いて北京へ帰る。それから27年、主人公は本当の親に会いに、北京へと旅立つのだ。

ん? 老三届たちは、ぼくの親と同年代ではないか。ウチの親父がちっこいバイクを友達と乗り回してオート三輪と激突しているとき、隣の国では恋愛もできずに、監視されたなかで生活を送った人がいたのか…。お、主人公もぼくと同年代である。オイラがチョッパった原チャリでコケて足の親指を道路にエグられているとき、隣の国では親に捨てられて満足に学校にも行けず、ひたすら農作業に従事していた人がいたなんて…。こりゃあ、観ないわけにいかん! と、東京都写真美術館に足を運んだのだ。

捨てられた子供と捨てた親が対面するときの生の顔。時代に人生を狂わされた人たちの生の声。胸にグググっときました。ただ、もうちょっと、もうちょっとだけ、主眼を置くところが絞られてると、もっと面白かったのになあ。しかし、現地の人からあれだけの表情や言葉を引き出した監督に脱帽です。

東京・恵比寿の東京都写真美術館ほかで上映してるので、興味のある人はぜひ。映画館はとても狭いけど、直前に行っても座れないことはないでしょう。いい席で観たい人は早めに行くとグーです。12月11日までなのでお早めに。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.