「レット・イット・ビー」原盤を忠実に再現した新装盤発売へ。

2003/09/19 04:40 Written by コジマ

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ビートルズの作品のなかで、『レット・イット・ビー』ほどメンバーの意図に反して完成したアルバムはないだろう。そして、皮肉にも一番売れたのも、この『レット・イット・ビー』だった。今回、初期音源を忠実に再現した新装盤『レット・イット・ビー...ネイキッド』が、11月17日に世界同時発売されることになったのだ。

初期音源とは何か。

当初、収録曲の一つである「ゲット・バック」をアルバムタイトルにいったん完成したが、この頃のビートルズはジョン・レノンを中心に空中分解しており、作品に対する意思の疎通が取れないために発売が見送られていた。その音源をプロデューサーのフィル・スペクターがイジりまくって完成したのが、ビートルズ最後のアルバム『レット・イット・ビー』なのだ。今回のは、フィル・スペクターがイジリまくる前の音源を忠実に再現したそうで、ポール・マッカートニーも「スタジオでぼくらが演奏したものと同じ」と評している。ホントかいな。

実は、この音源を収録したあと、ポール・マッカートニーがビートルズに対する最後の意地と愛着を表現したアルバム『アビー・ロード』が完成したが、『レット・イット・ビー』の完成がもたついたため、発売は『アビー・ロード』が先になった。つまり、本当の最後のアルバムは『アビー・ロード』なのだ。

その発売の前後は、アルバムの内容から分かる。

『レット・イット・ビー』収録曲の「ゲット・バック」では、ポールが「あの頃に戻ろうよジョジョ(ジョン)」と訴えかけているが、『アビー・ロード』ではジョンの引きとめを諦めており、その代わりすがすがしいほどの諦観と意地で、レコードでいうB面の「ゴールデン・スランバーズ」「キャリー・ザット・ウエート」「ジ・エンド」という、音楽史上例を見ないほどの素晴らしいメドレーを完成させた。そして、本当の最後の曲「ハー・マジェスティ」では、「ビートルズってぜんぶ冗談だったんだよ」と表現している。この2つのアルバムを通して、本当にポール・マッカートニーはビートルズが好きだったんだなあ、と感じたのだ。

また、『レット・イット・ビー』に対するビートルズの思い入れの低さは、そのジャケットでうかがい知れる。凝りまくっていた他のアルバムジャケットに比べ、4人の写真を同じ大きさで貼り付けただけ。「ファンをバカにしてんのか!」と言いたくなるデザインなのだ。新装盤ではジャケットを替えてほしいなあ。

新装盤では、「ドント・レット・ミー・ダウン」の未発表音源を収録しているそうで、それは楽しみなんだけど、なぜか「ディグ・イット」と「マギー・メイ」が削除されているらしい。「ディグ・イット」から「レット・イット・ビー」へのつながりを、『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』の「バック・イン・ザ・USSR」と「ディア・プルーデンス」のようにセットとして捉えていたいたぼくとしては、とても不満なのだ。

マニアックな話ですみません(笑)。

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