阪神優勝に寄せて。

2003/09/17 11:06 Written by コジマ

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タイガースにマジックが点灯したとき、ぼくはあまり嬉しくなかった。そんなぼくの気持ちをよそに、周囲だけが盛り上がっていく。連日、大々的に取り上げるスポーツ紙にスポーツ番組。毎日のように発売されていく阪神関連グッズ。そして、
「いやあ、阪神強いね」「もう優勝だね」「どんな気持ち?」
と会社のオジサマたち。
「ムカツクな」「読売タイガースめ」「とっとと優勝しろ」
と友人たち。

ぼくの周りには阪神ファンがほとんどいない。今年になって阪神ファンを名乗り出る人は多数いたけど、以前からのファンはコ○助を含めて数人だ。それでもファンが増えるのは嬉しい。でも、優勝した瞬間ですら口では「やったー!」と言いつつ、心の中ではそれほど嬉しくなかったのだ。

優勝の瞬間はクルマのなかで迎えた。草野球の合宿の帰りだった。連休の最終日だったので、東名高速の渋滞にはまっていた。隣には巨人ファンの友達が座る。文化放送で横浜−ヤクルト戦を聴き、そのまま優勝特別プログラムへ。胴上げやウェーブなどの実況を聴いていた。

「嬉しいことは嬉しいけど、なんだかあんまり嬉しくないんだよなあ」
「そう? 実感ないんじゃないの? あまりにも長かったから」
「いや、そんなんじゃなくて…」
「じゃあ、あれだ。選手の問題か」
そう、今年の選手を見てみると、優勝に貢献した伊良部、下柳、金本、片岡、アリアス、矢野、野口、広沢の各選手は移籍組だ。まあ、矢野捕手と広沢内野手は移籍してから随分経つので違和感はないけど、ほかはタイガースの選手になってから日が浅い。それを考えると、新人の久保田投手もそうだ。つまり、「見慣れない選手がタテジマを着て優勝した」という気持ちが強かったのだ。だからなんとなく素直に喜べなかった。それだけじゃない。シーズン当初から熱烈な広島ファンの友達に「金を積めば強くなるってことを巨人が証明して、ダイエーと阪神が常識化した。そういうことが迎合されると、広島は一生優勝できない」とさんざん厭味を言われたが、ぼくもそのことがどうも気になっていた。そんなことしてまで優勝しても嬉しくないんじゃないかな、と。

ところが。

ラジオで星野監督のインタビューを聴き、ゲストのダンカンが語っているのを聴くと、やっぱり、だんだんと嬉しくなってきた。映像で見られない分、言葉がじんわりと心に深く染み入ってくるのだ。と同時に18年間のさまざまな思いが去来した。高校野球のPL学園より弱いと言われたこと、大好きだった真弓の引退、弱すぎて(改善しようとしないので)ファンをやめようか本気で考えたこと・・・。思えば新庄や亀山を筆頭に、優勝を経験せずに球団を去っていった選手が何人いるのだろうか。遠山なんて優勝の次年に入団し、優勝の前年に退団した。でも、そういう選手たちは絶対にムダな存在じゃなかったと思う。いろいろな選手たちがいて、その積み重ねが今年の阪神タイガースなのだ。野田がいなかったら田村がいなかったら、また、坪井がいなかったら伊達がいなかったら、きっと違うチームが出来上がっていたのだと思う。ぼくは、以前は真弓が好きだったのだけど、今は特定の選手よりも、そういった積み重ねがある阪神タイガースが好きだ。

そんなことを思っていたら、高速道路を運転中にもかかわらず涙が溢れてきてしまった。横に友達がいるのに泣いた。高速が空いてきて120キロくらいで走っているのに、抑えきれなかった。止まらなかった。そのとき、本当に、本当に阪神ファンでよかったなあ、と思ったのだ。

矢野選手も言ってたけど、優勝の瞬間は捕手が投手に向かって走っていって欲しいもの。それを日本シリーズでぜひとも実現してもらいたいのだ。

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