大阪旅行も最終日を迎えたのだけど、メインイベントの甲子園が終わってしまったので、なんとなく気が抜けてしまった。昨日の疲れを引きずりながらも、最後の目的地、司馬遼太郎記念館に向かったのだ。

近鉄南大阪線で天王寺に出て、帰りの新幹線の切符をチケットショップで購入した。チケットショップで買うと、指定席で1500円もお得なのだ。病院に行く妹と別れ、ひとり環状線で鶴橋へ。さらに近鉄奈良線に乗って河内小阪駅で下車した。

駅構内にあった「司馬遼太郎記念館案内図」をもらい、改札を出ると商店街のアーケードに「司馬遼太郎記念館」と、デカデカと看板が出ていた。ここを進めばいいんだなと商店街を歩く。人もまばらで、のんびりとした良い感じの街である。なぜかやたらと自転車に傘を固定する器具をつけている人が多い。「なんだあれは。流行ってるのか？」とあとで妹に訊いたところ、オバちゃんを中心に大阪全域で大流行中らしい。うーん、やはり東西で文化が違うのか。

商店街を歩きながら地図を確認していると、隣の八戸ノ里駅のほうが近いことがわかった。まあ、ちょっと遠いけど、街の雰囲気がいいからちょっと歩くぐらいヘッチャラだい！ と思っていると、気になる文字が目に飛び込んだ。「月曜休館」。おい、今日は8月3日（月）ではないか！ 近くにいるオッチャンやオバちゃんに訊くと、「ああ、知らんけど、月曜休みて書いてあるから休みちゃいます？」「あー、そりゃ休みだわ」。なにぃー！ ここまで来たのに休みかよ！ 妹に電話して休館日のことを告げると、「ああ、図書館とか月曜休みのところ多いよね」と言われた。早く言えっつーの。しかたないので、妹と鶴橋で待ち合わせをして焼肉を食べることにしたのだ。

前回大阪に来たときに食べた「空」という店に行ったのだが、開店は5時だという。今は4時。1時間を潰すのに、妹お勧めのガード下巡りをすることにした。鶴橋は大阪有数の韓国人街だ。東京の大久保ほど大きくはないが、ガード下の狭いスペースにぎっしり店が詰まっている。いうなれば、東京・上野にあるアメ横のコリアンタウン版だ。その面白いこと面白いこと。韓国料理の食材はもちろん、新鮮な魚介類や乾物、お茶にお菓子にチジミ（韓国のお好み焼き。って知らない人いないか）、チマチョゴリなどの民族服、アヤシイブランド品など、ありとあらゆるものが売っている。ちょっと汚くて、乱雑でイカガワしくてザックバランなところは、下町出身のぼくとしては嬉しい限りだ。チジミに伸びそうになる手を必死で引っ込め、グルグル迷路のような路地を縦横無尽に適当に歩いていると、いつしか開店時間の5時になっていた。

「空」は旨いだけでなく、雰囲気もとても良い。狭い店ながらも、お兄ちゃんとお姉ちゃんのツートップが忙しなく、だけど愛想よく働き、司令塔のオモニと呼ばれる寡黙なオバちゃんがデンと構えている。そんな「空」でたっぷり肉を食べ、梅田に出て阪神百貨店でヨダレを垂らしながら阪神グッズを買い漁っていると、いつしか時間は8時をまわっていた。

妹とは大阪駅で別れ、8時40分新大阪発の新幹線で東京に帰った。たった3日だが、見慣れた東京の景色がほっとするようであり、残念なようであり、頭をよぎる明日からの日常を振りほどくように、大阪での（食べ物の）想い出をかみしめながら、家路を急いだのだった。

おわり