デート商法にハマッちゃった友達。

2003/05/20 18:11 Written by

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数ヶ月前の事です。地元の友達数人で飲んでいる時に、友人の一人がやたらとご機嫌だったんです。あまりも「この世界は僕のためにある」という顔をしているので理由を聞いてみると、彼女ができそうだ、という話でして。その彼、職人君とでも呼びましょうか、職人君は三度の飯より仕事が好きな男です。建築系の現場で働き、腕を磨く事が大好きな彼は普段お酒を飲んでいても「○○の工程はね、×△みたいにやる職人は多いんだけど、□□っていう材料が新しく出てきてね、それを使うと○×だから△□で今までより圧倒的に早く仕事ができるんだよ!この画期的な技術がわかる!?なんでわからないの!?」と、一般人には到底理解できないような仕事の話を熱く語る男です。

そんな仕事人間だった職人君に彼女ができそうだというのだからただごとではありません。聞いていた友達は僕を含めてみんな驚きを隠せませんでした。常々「嫁探しは独立してからでいい」と言って、女の子が来るような飲み会には来ないような職人君だったのですから。そこで興味津々の僕たちは、職人君と彼女の馴れ初めを聞く事にしました。以下は職人君の話をまとめた物です。

ある日職人君が街を歩いていると、20代半ばぐらいの女性が泣きそうな顔をしながら地面を見つめていたんだそうです。何気なく観察すると、どうも何か落とし物を捜している様子。気は優しくて力持ちの職人君は「どうしたんですか?」と声をかけたんだそうで。そしたら彼女、「ちょっと指輪を落としてしまいまして…」と。職人君は快く一緒に指輪を探す事にしました。…しかし結局見つからず。「もういいです。ありがとう」という彼女に職人君は「大切な指輪だったんじゃないの?」と聞くと「えぇ…。でももう時間なんです。もう手遅れなんで…。そうだ、お礼にお茶でもご馳走します。私暇になっちゃったんで。お暇ですか?」と彼女は答えたんだそうで。

はい。ここまで読んで多くの方が色々気付いたと思います(笑)。ツッコミどころは多いでしょうが続きを。

喫茶店で彼女は自分の境遇を語り始めました。「自分はアクセサリーデザイナー」「今日これから取引先に新作を見せに行くところだった」「今回は勝負作なので失敗できなかった」「取引先に行く途中に、指から抜けて落としてしまった」「約束の時間はとっくに過ぎているのでこの話はもうどうにもならない」「もう自分はお終い」などなど。

え〜、商品を身につけて行くのかよ!抜け落ちる指輪じゃダメだろ!約束の時間過ぎてるなら先方に連絡の一本でも入れるだろ!等々ツッコミたくなる気持ちはわかりますが、もうしばしご辛抱を(笑)。

そして彼女は、「実は前に付き合っていた男が悪徳商法の男だったらしく、自分には多額の借金がある。今回の勝負作にかけるつもりだった。これからどうやって借金を返していったら…。もはや風俗ででも働くしかないのかな」と、泣きそうになりながら語ったんだそうで。そして、そんな彼女の純粋さに心打たれた職人君は彼女の作品を買ってあげようと思ったんだとか。そして今では毎日電話する関係になり、彼女の過去の作品を全部買ってあげようと思っているんだとか。

「ほら?ただお金渡すだけじゃ彼女も悪く感じるだろうしさ。作品を買ってあげれば彼女の仕事のやる気も上がるだろ?」職人君はウーロンハイを飲みながらそう語ったのでした。

というわけで、職人君は完璧にデート商法にはまってしまいました。こういった恋愛感情を利用したデート商法、最近凄く流行っているんだそうです。もちろん前々からあったのですが、最近では出会い系サイトに登録してみたりと手口も多様化されてきているようでして。普通に考えれば、こんなできすぎたドラマチックな話は信じがたいのですが、職人君のような人は騙されてしまうわけです。さらにはこういった職人君のような性格だと、搾り取られるだけ絞り取られて逃げられた後も、「あぁ俺振られちゃったんだな…。良い授業料だったな…」と、自分が騙されていた事に気付かない事も多いのです。しかも、今回の手口の場合「道で困ってる人を無視できない心優しい人」というカモが自らよってくるわけでして、失敗は少ないわけです。恐るべしデート商法。

さて、この話の結末ですが、「俺はその元彼が許せないんだよ。悪徳商法に彼女をハメやがって!」と僕たちに熱く語る職人君。さすがに「いや、ハマッてるのは君だ」とは言えない状況…だと思ったんですけど、その場にいた全員から「お前が騙されてるんだよ!」と叱り飛ばされる職人君。「その女の名前は?今いくらつぎ込んだ?商品はみんな保管してるよね?」と凄い勢いで尋問されています。あぁステキな友達(笑)。

しかし「俺は彼女の事を信じてるんだよ!」と譲らない職人君。そこにとどめを刺すような「この場合お前の気持ちなんて全く関係ないけど」と言う友達。ニヤニヤと静観してた僕に職人君が「福士、お前はどう思う?彼女を助けてやりたい気持ちはわかるだろ?」と言いました。という事で僕は「じゃあ彼女に『俺の友達に生活安全課の警官と弁護士がいるから元彼の事は解決できそうだよ』って言ってみたら?彼女が本当の事を言ってれば喜ぶんじゃない?」と、提案してみました。彼女に嘘つきたくないのに…と渋る職人君を促し電話をかけさせます。…数分後、能面の様な表情で電話を置く職人君。「あんた何考えてるの!?二度と連絡しないで!私何も知らないから!」と言われたんだそうです。彼女もビックリしたでしょうね(笑)。当然その後は職人君からの電話は着品拒否にされていました。

その後、職人君はかなり落ち込んでしまいましたが、翌日友達の一人と一緒に警察に行ったんだそうで。数ヶ月経った今では良い笑い話として相変わらずネタにされていますが、その時は独立資金として貯めている定期預金にまで手を付けようと思っていたんだそうで、あの日にみんなから指摘されなかったら今頃どうなってたんだろうと思っているそうです。「まったく若気の至りとはこの事だな」と、ちょっと違う気もする感じに当時を振り返る職人君は、今は毎日また楽しげに働いています。

というわけで、とっても危険なデート商法。皆さんもぜひご注意を。

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