100円玉と恋物語。

2003/02/21 18:22 Written by

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あまり見ないタイプの自動販売機には、聞いた事の無い名前のお茶なんかが売ってたりしますよね。あれ僕好きなんですよ。味が好きというわけではないのですが…。

もう随分前の話ですが、都内の一等地に住む女の子と仲が良かった事があります。で、頻繁にその子の家に遊びに行っていたのですが、何しろこちらは神奈川在住。終電の時間を考えれば、遊びに行く事は絶望的だったんですね。そこで仕方なしに車で行っていたんです。高速に乗ってエッチラオッチラと。あぁ、若さゆえですよね…。

まぁそれは良いとしましょう。問題となったのは駐車する場所。当然の如く、近くのコインパーキングに停めていたわけなんですが、近くといっても結構遠い。歩いて5分以上はかかる場所でした。それでも頻繁に通っていたわけですから、改めて若さをしみじみと感じたり…。

で、そのコインパーキングがクセ物だったというが今回の話の要点なんですけど、100円と500円しか使えなかったんですよ。都内一等地だけあって、駐車料金もなかなか。あっというまに2〜3000円になってしまいます。当然そんなに小銭があるわけではないので、両替しなくてはならないのですが、近くにお店が何もない場所だったんですね。最初にそこに停めた時には大いに悩みました。往復20分歩いてコンビニで両替してもらおうか…。でもコンビニは大量の両替は嫌がられますし、そういった迷惑をかけるのも胸が痛む。

悩んでいた僕の視界に、一台の自動販売機が飛び込んできました。小銭しか使えないコインパーキングの敷地に置かれた自動販売機。設置した人間の思惑が手に取るようにわかります。しかし背に腹は代えられないので千円札を投入。聞いた事も無いメーカーの自販機で、興味をそそられる飲み物は置いていません。しかもコーラやオレンジジュースは売り切れてて、残っているのはお茶やおしるこ…。仕方なしにお茶をチョイス。お釣りは880円。これを繰り返して小銭を集めます。あぁなんて無駄金。

ようやく料金分の小銭を集めて精算機の前に戻ると、驚愕の事実が。

「新500円未対応」

な、なんて事ですか…。設置した人間の思惑は、僕の想像を遙かに超えるものだったのです。自動販売機は「旧500円未対応」のため、お釣りは新500円でしか出てきません。という事はこの新500円でもジュースを買えということです。つまりは千円札を使用しても、100円玉は6つしか手に入らないわけです。ならばこうだと、自販機に520円を投入するも、お釣りは100円玉で出てこない。どうやっても4枚です。これで2000円の料金を払わなくてはいけないなんて、お茶を何本飲めというのでしょうか。僕はこの時に、コインパーキング経営者の掌の上に乗っている事に気がつきました。

季節は流れ、学習した僕は普段から100円玉を集めておくようにしました。それでも何度と無く何本ものお茶を飲む事があったので、一念発起して銀行で大量の両替をしました。しかし、その100円玉は一枚も使われることなく、その子とは疎遠になってしまいました。当時繊細だった僕はその100円玉を100円ショップで買った「10万円貯まる貯金箱」へ、一枚一枚思いを込めて入れていきました。貯金箱が一杯になってもまだ100玉は何枚か残っていました。

そんなこんなもあって、今でも自販機で名前の知られていないお茶を見ると、当時の思い出が切なく蘇ってきます。

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