人工芝を導入している球場が多いなか、甲子園は維持費がかかるものの選手に負担が少ない天然芝を1929年(昭和4年)から頑固に守り通しているいるのだけれど、芝が敷かれているのは外野のみ。今回の改装の一環として、現在、土のみの内野にも天然芝を取り入れるのだとか。グラウンドを管理する阪神園芸によると、「正式に決まれば今オフに芝を張って来季から使用することは可能」とのこと。
ただ、内野に芝を敷くのは欠点も多く、最大の懸案は今年も31日から始まった全国高校野球選手権出場校の「甲子園練習」。1日20校近くが使用するため芝生の激しい損傷が予想されるので、この練習を二軍の試合などが行われている鳴尾浜球場などでの代替開催を検討しているのだとか。一度でも多く甲子園の土を踏みたい球児たちには気の毒だけれど、試合では使用できるのでここは我慢してもらいたいのだ。球場を管理する阪神電鉄は、全英テニスのウィンブルドン・センターコートを例に「開会式に芝がはげていては美観も悪いが、決勝戦では“激戦の跡”として受け入れられるのではないか」とコメント。格闘技の試合でマットについた血を拭き取らないのと同じ演出効果を期待しているのだろうか。さらに、同社は「国際基準に見合った美しい天然芝で、新たな野球場のお手本になりたい」と鼻息も荒い。日本を代表する球場として、選手のプレー環境を向上させるすばらしい芝の敷設を期待するのだ。
一方、2007年に前倒しされたスタンドなどの大改修計画として、現在、
・場外にある新室内練習場内にタイガースのクラブハウスを設置
・球団と高校野球の史料館を新設
・観客席をファウルグランドまで広げる
・スイートルーム新設
・バリアフリー、耐震設計
・外壁のツタとレトロ調スコアボードを保存
・内野スタンドを覆う「銀傘(ぎんさん)」は柱のない屋根にする
・収容人員は約5万人
―が挙げられているのだ。ほかにも建物内部の補強やスタンドの改修も予定。座席数を減らし、現在よりもゆとりをもって観戦できるものとなるそうなのだ。以前にもお伝えしたとおり、本拠地の一時移転はせずに、2007年に着工し、毎年オフに内野、外野などに分け、3〜5年をかけて漸次改修する計画だそうな。つまり、早ければ2010年、遅くとも米寿を迎える2012年開幕に新生・甲子園球場誕生なのだ。巨人や日ハム(当時)が使用していた後楽園球場から東京ドームに移行したときのような激変はないけれど、開幕の度にだんだんと生まれ変わっていく甲子園球場を見るのも面白いかも。「甲子園が100歳を迎えても残るような形にしたい」と意気込む球団に期待なのだ。