池上彰氏、“ハンバーガー帝国”創った男を語る

2017/07/26 16:57 Written by Narinari.com編集部

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ジャーナリストの池上彰氏が7月25日、映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」のトークイベント付き試写会に登壇。“池上節”を炸裂させた。

本作の舞台は1954年アメリカ。52歳のレイ・クロックは、シェイクミキサーのセールスマンとして中西部を回っていた。ある日、ドライブインレストランから8台ものオーダーが入る。どんな店なのか興味を抱き向かうと、そこにはディック&マック兄弟が経営するハンバーガー店「マクドナルド」があった。合理的な流れ作業の“スピード・サービス・システム”や、コスト削減・高品質という革新的なコンセプトに勝機を見出したレイは、壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得し、契約を交わす。次々にフランチャイズ化を成功させていくが、利益を追求するレイと、兄弟との関係は急速に悪化。やがてレイは、自分だけのハンバーガー帝国を創るために、兄弟との全面対決へと突き進んでいく――。

この日、イベントに登壇した池上氏は、20年ほど前に本でレイの存在を知り、本作を観て久しぶりに思い出したという。

「(レイは)非常にアグレッシブな人物。ここまでやらなければならないのか、もしくはこれだけやったからこそ帝国(マクドナルド)を築くことができたのか――。映画を観た人がそれぞれ判断を任されるそんな作品です。個人的には<ルート66(道路)>を東から西へ横断するシーンが出てきますが、私くらいの世代には、テレビドラマの影響でこれが大変懐かしくてたまらなかった。1950年代のアメリカってこうだよね、と思える。あの時代の雰囲気や車などそういう見方も楽しいかもしれません」

52歳でマクドナルド兄弟と出会ったレイ。池上氏の転機といえば、「NHKの退職時とも言えるのでは?」と共通点について投げかけると、「確かに辞めていますけど、レイと一緒にしないでください!(彼と一緒なんて)ありえないですね、マクドナルド兄弟側になっていた可能性はあるかもしれないですけどね(笑)。兄弟の品質へのこだわりに共感をしました。たしかにとても実直で、もう少し融通がきけばレイとの衝突もここまでにはならなかったと思わない所もあります。どちらの側にも共感ができました。レイは兄弟が気付かなかったチャンスに気付き、その説得力はなかなかなものでした。一方で兄弟はFC展開をすることで自分たちの手にはおえないほど大きくなり、このままではいけないのではないかと葛藤する。販売するモノへのこだわりです。これは現代版の『集中と選択』ですよね」と、現代に通じる、会社を甦らせるために必要な成長戦略に紐づけて解説。劇中のミルクシェイクのエピソードでは、牛丼のFC店「吉野家」が一時使用したという粉末のタレ問題を思い出したと語り、画期的なシステムを構築し、発見した人間が成功者になりえたゆえんを、マイクロソフト、ユニクロ、Amazonなどを例に出し、場内多くの観客を唸らせていた。

そして「映画のタイトル『ファウンダー』はものすごい皮肉です。はたして創業者は誰か、という問題に行き着きます。この30秒でハンバーガーを提供するシステムのファウンダーはマクドナルド兄弟。マクドナルドの店を帝国にしたのはレイですから。今の時代だったら、どこかの国がすぐやりますけどパクっちゃえばいいことなんです。でもレイはこの<マクドナルド>に固執したんですね。なぜか?それが映画の最後に明かされるんですよ。ネタばれになるからここまで……!」と語り、「アメリカの資本主義はこういう人達がいるから発展したんですね。日本人はマクドナルド兄弟へ共感を得る人が多いと思います。だから日米の経済の違いが出てくる。日本がデフレを突破できないのは、そういう見方できるんじゃないでしょうか。観たくたるでしょう?観たら観たで、知らない誰かに教えたくなる、そんな映画なんです!」と池上節を炸裂させた。

映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」は、7月29日、角川シネマ有楽町、角川シネマ新宿、渋谷シネパレスほか全国ロードショー。

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