ブラジル・サンパウロに住む動物好きのある女性には、5年ほど前から毎日欠かせない日課があるという。それは、彼女が作る餌をねだりに、決まって夜9時半にやって来る1頭の犬との“待ち合わせ”。自宅近くで迷っていたように見えたその犬に餌をあげるようになってから、毎晩決まった時間に近くの路上で会うようになり、犬は袋入りの餌を彼女からもらうと、必ず全てを食べ切らずに持ち帰っていくそうだ。実はそこには。その犬の大きな事情があった。
英紙デイリー・メールなどによると、毎日餌のやり取りを行っているのは、サンパウロに住むルシア・ヘレナ・デ・ソウザさんと、彼女の家から約6キロ離れた廃品置き場で生活している、“リリカ”と呼ばれるメスの犬。2012年9月に紹介したブラジル放送局のニュースサイト「G1 globo.com」の説明では、ソウザさんとリリカが顔を合わせるようになったのは、いまから約5年ほど前だという。もともと動物好きで、自宅にも多くの犬や猫を飼っているソウザさんは、ある日餌を探していたのか「迷子のように」彷徨っていたリリカの存在に気付いて餌を与えたことをきっかけに、毎晩やって来るようになったリリカの餌を用意するようになったそうだ。
やがて、どこからか毎日現れるリリカのために、毎日夜9時半に袋に入れた餌を持って自宅近くの路上で与えるようになったソウザさん。そのうちに、いつもリリカが途中で餌を食べるのを止めて「袋の中をじっと見つめている」様子を見せることに気が付いた。その様子を知った近所の人から、リリカが餌を「持ち帰りたがっているのではないか」と言われたソウザさんは、食べるのを止めた時に「袋の口を縛って手渡した」ところ、リリカは袋をくわえて持ち帰るようになったという。
そんなリリカの行動を追った様子を紹介しているニュース映像が、2013年1月14日付でYouTubeに投稿された動画「Lilica: the junkyard mutt」。餌を渡し「気を付けて」と声をかけるソウザさんの元から立ち去るリリカは、交通量の激しい道路沿いなどを歩き続け、やがて4マイル(約6.4キロ)離れた廃品置き場の中へ入り、ソウザさんからもらった餌の袋を置く。すると、そこで生活するほかの犬や猫、さらには「ニワトリやラバ(※ロバと馬の雑種)」までもがリリカの餌をあてにして現れ、口にしていたのだ。
この廃品置き場の所有者という女性の話では、以前誰かに捨てられてここで生活し始めたリリカ。ソウザさんと出会った5年ほど前に8頭の子犬を産んで母となり、充分な量の食べ物を調達しようと探し回っている時に、助けてくれる彼女と出会ったのではないかと見られている。ある日気になって後をついて行った時、そうしたリリカの真意を初めて知ったというソウザさんは、「他の動物たちにも食べ物を分け与えるのは、私たち人間にとっても学ぶべきこと」と話しており、これからもリリカとの日課を大切に続けていくつもりのようだ。