昨年8月、米国の女性カメラマンが紹介した1枚の写真が、世界で大きな反響を呼んだ。被写体は湖に入る男性と、彼に安心してもたれるように胸の中へ顔をうずめている飼い犬のショップ。ショップが患った関節炎の痛みを少しでも軽くしようと、浮力を利用した治療として湖へ入るようになったという。そんな経緯も含め、女性カメラマンが写真とともにFacebookで紹介したところ、評判となって世界へと話が広がった。しかし7月18日、ショップが20歳の生涯を閉じたと男性がFacebookで公表。その死を悼むコメントが数多く寄せられている。
話題の写真で注目を集めたのは、ウィスコンシン州ベイフィールドに住むジョン・アンガーさんと、飼い犬だったシェパードミックスのショップ。19年前、交際していた恋人と動物愛護団体に出向いた彼は、前の飼い主に虐待されて保護されていた当時1歳のショップを見初め、引き取って飼い始めたという。その1年後、恋人と別れを迎えたショックからミシガン湖で入水自殺を考えた彼は、ショップが“見たことのない表情”で自分を見つめていることに気が付き、自殺を思いとどまった。それ以来、彼は感謝の気持ちから愛犬を大事にしようと考え、ショップとの幸せな生活を続けていたそうだ。
ところが昨年、19歳となったショップは、体の衰えもあり重度の関節炎を患ってしまう。獣医から命の危険も指摘され、永遠の別れが間近に迫っている実感も湧く中、愛犬を苦しめる「痛みを和らげてあげたい」と考えたアンガーさん。関節炎の人が水の浮力を利用して治療する話を思い出し、近くにある湖へ愛犬を入れてあげるアイデアを思い付いた。以来、気温が高い時期は毎日散歩へ出かけて湖に入るようになると、愛犬はリラックスするように彼の胸で眠るようになったという。そんなとき、「いつ最後になっても良いように」とアンガーさんは知り合いだった同じ街に住む女性カメラマンに声をかけ、愛犬を抱く写真を撮ってもらった。
そして昨年8月1日、カメラマンがFacebookで写真を公開すると、彼の行動への賛意も含めて大きな話題に。欧米メディアでも広く取り上げられ、彼らは一躍注目の存在となった。それに合わせるように、アンガーさんも昨年8月5日にFacebookページを開設。ショップとの日常を紹介する写真や書き込みは、常に多くの人から関心を集めた。こうして飼い主が思い付いた治療の甲斐もあってか、その後も懸命に生き続けたショップ。今年6月15日には20歳の誕生日も迎え、7月16日までは変わらない様子が紹介されていたが、7月19日の更新でアンガーさんは、18日に愛犬が死んだと発表。彼のショックを物語るように、7月20日以降は更新が止まっている。
ショップの死は、彼らを見守り続けて来た多くの人たちも悲しみを感じたようで、アンガーさんの書き込みに約8万3,000件ものコメント殺到。誰もがアンガーさんの行動を称賛するとともに同情の気持ちを示し、ショップを悼む内容のメッセージを寄せている。
なお、昨年話題になって以降、アンガーさんのもとには「テキサスやスロバキア、日本」(米紙セントポール・パイオニアプレスより)など、多くの国や地域の人からショップの治療費にと、寄付があったという。