夜勤者はがんリスクが2〜3倍、男性対象に11種類のがんとの関連検討。

2012/10/24 17:12 Written by

このエントリーをはてなブックマークに追加


夜間勤務者では心筋梗塞や脳卒中、糖尿病になるリスクが高まると指摘されている。がんについても、前立腺がんや乳がんのリスクが上昇すると報告されているが、カナダ・ケベック大学州立科学研究所のMarie-Elise Parent氏らは、男性を対象にした研究から、夜勤はこれまで指摘されていた以外のがんの発症とも関連すると、10月3日発行の米医学誌「American Journal of Epidemiology」(電子版)に発表した。夜勤をしている男性では、夜勤未経験の男性に比べてがんリスクが2〜3倍高かったという。

◎11種類のがんを検討

夜間に光にさらされると、夜間に濃度がピークに達するはずのメラトニン(睡眠に関係するホルモン)の分泌が抑制されてしまう。メラトニンの抑制は概日リズム(サーカディアンリズム)や生殖ホルモンなどを障害するほか、がん発症に影響を及ぼすことが指摘されている。

Parent氏らは、最低6カ月間、夜間勤務に従事した男性(タクシー運転手、機関士、警備員、消防士、警察官、ライター、医師など)とがん発症の関連を検討した。対象となったのは、1979〜85年にカナダのモントリオール州とケベック州で就労していた男性のうち、がんが認められた30〜70歳の3,173人(症例群)。これと年齢や住んでいるところが同じでがんを発症していない男性512人を対照群とした。なお、午前1〜2時の夜勤を6カ月間以上経験していたのは症例群で25.5%、対照群で14.5%だった。

症例群のがんの内訳は、肺がん(761人)、結腸がん(439人)、膀胱(ぼうこう)がん(439人)、前立腺がん(400人)、直腸がん(236人)、胃がん(228人)、腎臓がん(158人)、膵臓(すいぞう)がん(94人)、食道がん(91例)、メラノーマ(悪性黒色腫、94人)、非ホジキンリンパ腫(197人)となっている。

◎7種類のがんでリスク上昇

解析の結果、夜勤は胃がん、食道がん、腎臓がん、メラノーマを除く7種類のがんリスクと関連することが分かった。夜勤未経験者と比べたリスクは、前立腺がんで2.77倍、非ホジキンリンパ腫で2.31倍、膵臓がんで2.27倍などとなっており、最もリスク上昇が低かった膀胱がんでもリスクは1.74倍に上がっていた。

一方、夜勤の継続期間(5年未満、5〜10年未満、10年以上)や経験した時期(20年以内、21年以上前)に分けた評価では、がんリスクとの関連は認められなかった。

これまでも夜勤と乳がん、前立腺がんの発症リスクは関連することが報告されていた。今回の結果について、Parent氏らは「乳がん、前立腺がん以外のがんと夜勤の関連を証明した、疫学研究としては新しい成果」と述べている。

なお、全盲の夜勤者ではがん発症率が低いことが1998年のスウェーデンがん登録研究で明らかになっている(「Epidemiology」1998; 9: 490-494)。


※この記事(//kenko100.jp/news/2012/10/24/01)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.