昨年12月のFIFA理事会で、2022年のワールドカップ開催地に決まったカタール。通常の開催時期(6〜7月)ならば「気温が50度にも達する」(英放送局BBCより)など、灼熱の地の気候問題は決定当初から指摘されているが、同国の研究者はスタジアムの上に浮かべる“人工雲”で日射しを遮るアイデアを提案している。
カタールの気候はサッカーをプレーするのに適しているのか否か。この問題は開催地を決める投票が行われる前から指摘されているが、同国の招致委員会は、開催が決定すれば屋根付き・エアコン完備のスタジアムを建設し、選手が支障なくプレーできるようにするとプレゼンテーションしていた。
そうした中で、カタール大学機械工学部長のサウド・アブドゥル・ガーニ博士が提案したのが“人工雲”のアイデア。ガーニ博士が打ちだしたのは、雲というよりは空に浮かぶ巨大な日除けのようなモノで、「軽量のカーボン素材で作られ、ヘリウムガスを注入」(英放送局BBCより)して浮かべるという。それがどのようにして使われるのかは、YouTube(//www.youtube.com/watch?v=MDcxbsh6qLQ)に投稿されているモデル映像を見ればよく分かる。
太陽光パネルを装備した長方形で板状の“人工雲”には、四隅にプロペラを装備。操作は遠隔で行い、スタジアム上空へと移動させる仕組みだ。雲の大きさに関する詳細なデータは明かされていないが、動画を見る限り、スタジアムにごく近い高さに留まって、ピッチの大半を直射日光から遮ることができる程度の大きさのようだ。この“人工雲”ができれば太陽の移動にも柔軟に対応できるほか、スタジアムに関係なく使用できる利点もある。
さらには、この機械の製造にかかるコストは1台約50万ドル(約4,000万円)程度で、通常数百億円かかるスタジアムの建設費用や、新たに空調などの設備を取り付ける改築費用と比べればまさに破格。エアコンの効いた環境に近付けるのは難しいかもしれないが、少なくとも既存のスタジアムを活用する際は大きな力となるかもしれない。ガーニ博士はこれが完成したら、試合会場だけではなく「トレーニング場にも提供」し、各国代表の練習に利用してもらうつもりと話している。