「印度放浪」や「東京漂流」「メメント・モリ」など、数々の写真集や小説、随筆などを世に送り出してきた写真家の藤原新也氏が、公式サイトでウェブマガジン「CATWALK」を5月1日に発行すると発表した。
藤原氏は公式ブログで「こんなご時勢に新たな大型企画、藤原新也WM(ウェブマガジン)をとつぜん立ち上げるというのは驚いたという意見が多い。実はもう少し温めてと考えていたのだが、突然の大震災である。現地に行って、本当にウソじゃなく神は死んだと思った。東京に帰っても人間が憔悴しきっている。いや日本全土が憔悴している。人生の付録で生きているような私のような者こそ、ここはくじけるのではなく“攻めの姿勢”を見せることこそが大事だと思った」と記し、今回の震災がかねてから温めていたウェブマガジンの発行を早めるきっかけになったことを明かしている。
藤原氏は3月18日に支援物資を携えて被災地へ出発。「この大惨状は新聞テレビが報じているように点ではなく線で見なければその巨大さがわからない」「闇の向こうに延々と広大な廃土。内陸から海岸線に出るたびに驚愕。普通は一度見た光景は2度、3度見るたびに慣れて来るものだが、何度見ても驚く自分がいる。原爆の荒野、空襲による大火災ののちの荒野は、燃えたことによって復興が容易になるという皮肉な結果があるが、この津波による荒野は膨大な量の廃物が複雑頑強に絡みつきながら居残っている」など、被災地の現状を、写真とともに連日公式ブログで報告していた。
ウェブマガジン「CATWALK」は事前申込みが必要な会員制雑誌とのこと。これまで同氏が表現手段としてきた写真や文章、絵画、書以外に、ウェブマガジンならではの動画や音楽、実況中継なども交えた総合メディアになるそうで、同氏は「さまざまな表現形態から発せられるメッセージを無規範と化した世の中を生き抜く『生き方の羅針盤装置』として機能させたい」(公式サイトより)としている。なお、「CATWALK」という名称は氏が単純に「猫が好き」ということと、「音もなく歩く忍者のような意」が込められているそうだ。
阪神・淡路大震災の際も現地入りし、支援物資を届けた経験を持つ藤原氏。今回の震災を通じて同氏が何を思い、どのようなものを撮影・執筆し、世界へ向けて発信していくのか。注目しておきたいところだ。