中国とインド、10億人を超える人口の両国はなぜサッカーが弱いのか。

2011/01/26 08:01 Written by ナリナリ編集部

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サッカー中国代表が試合に負けた後、中国のウェブサイトに掲載されたスポーツニュースのコメント欄を覗くと、「人口が13億人もいるのに、なぜ強いサッカーチームが作れないのか」といった主旨の書き込みを見かけることがある。今回のアジア杯でも中国代表の敗退が決まるや否や、同様の不満コメントが散見された。人口が多ければ、それに比例して才能のある人間も多いのでは――とは誰もが考えるところで、こうした内容の書き込みが完全に「的外れ」であるとは言い難い。しかし、中国と同様、多くの人口を抱えるインドもやはりサッカーに関しては華々しい成績を残せないでいる。なぜ、人口が多くてもサッカーが弱いのか――そんな素朴な疑問について、米紙ニューヨークタイムズや中国のスポーツ専門サイト騰訊体育が両国のサッカー事情を分析した。

まず、サッカー中国代表の力が向上しない理由として挙げられているのは、欧州で活躍する選手の少なさだ。アジア杯中国代表メンバーに選ばれた23選手の中で、欧州のトップリーグでプレーしているのはハオ・ジュンミン選手(ドイツ1部リーグのシャルケ04所属)のみ。現在中国1部リーグの山東魯能で指揮を執るクロアチア人のブランコ・イバンコビッチ氏は「より多くの選手が欧州でプレーするようになれば、彼らが中国のサッカーを変えられる」と語り、中国代表の強化には欧州で活躍する選手の存在が不可欠であると説いている。

また、サッカー情報サイト・ゴールドットコム中国のトニー・ムートン編集長は、多くの学校でサッカーができるグランドが完備されていない点などを指摘。混雑した中国の都市部ではサッカー場を作るよりもバスケットコートを作るほうが効率的で、かつバスケットボールのヤオ・ミン選手などの世界的スターの存在もあって、なかなかサッカー文化が浸透しないと分析しているようだ。

一方、インドでは中国のバスケットボール同様、クリケットがサッカーの存在を脅かしている。2011年2月から4月にかけて、インド・スリランカ・バングラデッシュの3か国共催で開催されるクリケットワールドカップの影響で、今回のアジア杯に派遣されたインドの記者はほんの一握り。しかも皆、グループリーグの終了に合わせて帰国便を事前予約していたというほど、メディアの関心も薄い。また、インドのサッカープロリーグは中国と比べてもレベルが低く、設備も不十分。そうした点が影響して、インドのサッカーファンは自国のプロリーグには関心を示さず、欧州の各国リーグを観る傾向があるそうだ。国民もメディアも国内サッカーに目を向けない状況では、人材の育成も難しいところだろう。

かつてインド代表監督を務めたスティーブン・コンスタンチン氏は「多くの選手と監督が草の根レベルで進化しなければならない」とし、すべての国内クラブに育成アカデミーを設立する必要性を説く。その上で米国のメジャーリーグサッカーのように、国内全体にまでサッカーが広がるようリーグ改革を行う必要があるとしている。

サッカーインド代表の現監督であり、かつて中国代表監督も務めた経験を持つ英国人のボブ・ホートン氏は「いずれ中国もインドも強くなるだろう。しかしそれは人口のためではない」と断言。成功へ導く鍵は「(両国の)潤沢な資金」にあり、その資金を用いて最高の設備を作って有能な指導者を招くことができれば、遅かれ早かれ両国ともに強くなるだろうと、現実的な見方をしているようだ。

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