インターネットのおかげで生活が格段に便利になった現代。今後もさまざまなシーンで私たちの生活を豊かにしてくれるに違いないが、その使い方を一歩間違えれば「道を踏み外す」可能性も十分にある。このたび中国で報じられたのは、チャットやSMS(ショートメッセージサービス)を必要以上に使ったことが原因で夫婦の愛に亀裂が入ってしまったという話だ。
「水をちょうだい」。そんなSMSがリビングに置いてある妻のケータイに届く。夫は妻と遠く離れているわけではなく、同じ家の中、少し離れた寝室でインターネットに興じている。妻に話しかけるのが億劫で、パソコンのインスタントメッセンジャーを通じてショートメッセージを送ってきたのだ。
もちろん、同じ家にいながら声をかけることもなくショートメッセージで指図する夫の行為は、妻には「理解不可能」。そこで彼女は見て見ぬふりをすることにした。しかし、続けざまに2通、さらに夫からショートメッセージが送られてくる。内容はまったく同じの「水をちょうだい」。彼女の怒りは今にも爆発しそうになった。
話はまだ終わらない。いつまで経っても水を持ってこない妻の態度が許せなかった夫が寝室から飛び出し、「そんなにテレビが面白いのか? 3通もショートメッセージを出しただろ!」と妻に言いがかりをつけてきた。夫に言わせれば、ショートメッセージで用件を伝えること自体はこの際さしたる問題ではなく、彼女は夫の些細な願いさえも満たしてくれない“悪妻”ということらしい。
そしてついに二人の間で激しい夫婦喧嘩が勃発。最終的に離婚する、しないの騒動にまで発展してしまったという。
中国紙重慶晩報が伝えたこの話は、中国の重慶市で暮らす夫婦の実話。夫の職業はデザイナーで、仕事のため常に静かで集中できる環境を望んでおり、クライアントとのやり取りもインスタントメッセンジャーやメールで済ますことが多かったそうだ。
妻の話では、夫はいつからともなく仕事が終わって帰宅すると寝室にこもるようになり、パソコンでインターネットをすることが日課になっていた。食事をしたり、着替えをしたりするとき以外は、余計なことは話さない。二人がともにインターネットを使っているときは、男性は必要なことすべてをインスタントメッセンジャーで伝え、もし妻がインターネットを使っていなければ、ケータイにショートメッセージを送って用件を済ますという生活が続いていたという。
そうした会話のない生活は徐々に女性の心にストレスを溜め、気が付けば夫婦喧嘩、離婚騒動にまでなってしまったというわけだ。
結局、二人は友人の勧めでカウンセリングにかかることになった。専門家が言うには、これは典型的な「ネット依存症」の症状であるという。一例を挙げれば、チャットでは絵文字ツールなどを使って、話すことがなくてもその場を楽にしのげるが、それに慣れ過ぎると本当に人に向かい合った際に会話がスムーズに進まなくなるというのだ。
実際、この男性に関しても、妻とわざとチャットやショートメッセージでコミュニケーションを図ろうとしていたわけではなく、もはやそうせざるを得ない状況にまで「蝕まれていた」という見方のほうが正しいのかもしれない。