不景気の風が吹き荒れる昨今、人件費のカットをせざるを得ない企業もある中で、定年まで勤め上げたとなれば立派なもの。あとは残された人生をゆっくりと楽しもう……とも思いたくなるが、中にはそこからさらに働きに出て、元気に動き回る年配の方もいる。米国の郵政公社では、58歳まで空軍に務めてから転職し、37年間1度の病欠もなしに郵便局で働き続けた男性が、このたび元気なまま引退を決意した。高校を卒業してからずっと働いてきたこの男性、95歳になってようやく「あまり時間が残されていない」と思い、今後は息子と世界を旅してまわる予定だという。
米紙サンバーナディーノ・サンによると、この男性はカリフォルニア州レッドランズの郵便局で働いていた、95歳のチェスター・リードさん。1914年生まれのリードさんは、高校を卒業してから整備士、エアコン会社経営を経て33歳のときに空軍へ入隊し、ドイツや沖縄などで軍隊の仕事に従事。58歳のときに郵政公社へと身を転じた。
1973年6月からレッドランズの郵便局で働き始めたリードさんに与えられた仕事は、郵便物の仕分けや、フォークリフトを使っての運搬作業で、「毎日午後2時半から11時まで」(米放送局KTLAより)のシフトで勤務。時には「12時間以上の勤務」をするなど年齢を感じさせないタフさで、95歳までの37年間で病欠は1度もなし。未使用の病気休暇(有給)は3,800時間を超えるという。
息子の話によれば、当初は100歳まで働くつもりだったというリードさん。95歳の今、なぜ引退する気になったのかとの質問に、「あまり時間が残ってないと思った」(米紙ワシントン・ポストより)と答えている。そして、元気なうちに息子と旅行したいと、残りの時間の使い方のプランも固まっているようだ。しかし、並の95歳ではないリードさんは、「7月にロシアを訪れる」(サンバーナディーノ・サン紙より)のは序の口。さらには、スカンジナビア3国にデンマーク、アイルランド、インドと、行きたいところはたくさんあるという。
もともと「動くのが好き」(ワシントン・ポスト紙より)とあって、リードさんはじっとしてるより動いてないと気が済まない様子。そんなリードさんの元気の源は「スイカとアルカリ水、マヨネーズを添えた玉ねぎサンドイッチ」(KTLAより)で、これらが長い間元気でいられた秘訣だと考えているようだ。中でも「みんなスイカを食べれば、医者はいらない」と、特にオススメなのはスイカらしい。
最後の出勤日となった6月30日、リードさんの勤務年数(37年間)よりも若い同僚たちを含む約100人が集った退職パーティーが開かれ、郵便局での仕事を終えた。数年前に妻ともう1人の子どもに先立たれ、残った身内は息子1人。100歳の引退予定を切り上げて作った大切な時間を、これから唯一の家族と謳歌して欲しいものだ。