9年間ずっと「船酔い」の状態に、友人と出かけたクルーズがきっかけ。

2010/07/01 12:12 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


車や船などの乗り物に長時間乗っていると、酔って気持ち悪くなってしまう人も多いだろう。不規則な揺れに三半規管が対応できなくなることが原因だが、乗り物から降りてしばらく時間が経てば、落ち着く場合がほとんどだ。しかし、英国のある女性は9年前に友人のボートに乗って地中海の船旅を楽しんで以降、船酔いがずっと治らないまま現在に至っているという。絶えず目の前がぐるぐると回っているような状態に悩まされ、医師からはデバルクマン症候群との診断を下されたそうだ。

チェシャー州ウォリントンで暮らす46歳の女性、ジェーン・ホートンさんがこの症状に陥るきっかけとなった船旅に出かけたのは、2001年6月のこと。このときホートンさんは友人のボートに乗り、スペインのリゾート地マジョルカ島で地中海のクルーズを1週間楽しんだ。問題は、優雅なクルーズが終わって地面に足を付けたときから始まったという。

船から降りても平衡感覚を失い、バランスを取ることができなかったホートンさん。下船して向かったレストランでも、終始「テーブルが揺れていた」とめまいに悩まされたそうだ。ところが旅が終わって2週間が過ぎても、乗り物酔いの薬を飲もうが一向に症状が改善せず、不安に駆られたホートンさんは病院で検査を受けることに。すると、MRI検査で彼女の頭に脳腫瘍が見つかり、処置を行ったが、めまいは治ることはなかった。

いつまでも続くめまいに、ホートンさんは「自殺がちらつくほど、自分がおかしくなっている」と思うようになり、医師も困惑。目の前がぐるぐる回っている状態に悩まされ、歩いているときも「マットレスやトランポリンの上を歩く感じ」が続いた。まっすぐ立っているのも困難で、特にパソコンを使う作業が「状態を悪くする」(英紙デイリー・メールより)こともあり、それまで働いていた仕事も週5日から2日に減らさざるを得なったそうだ。

原因が全く掴めないままいたずらに時は流れ、ついに業を煮やしたホートンさんは、使いたくないはずのパソコンでインターネットをフル活用。その結果、米国のサイトで彼女の症状に該当する、デバルクマン症候群の名前を突き止めた。通常の生活に戻っても、乗り物酔いの状態が治らないこの症状。研究をしている米カリフォルニア大学のチャ・ユンヒ教授は、現時点では「極めてまれな障害で、治療法がない」(英紙デイリー・レコードより)と語り、メカニズムは解明されていないという。ホートンさんの場合も、何らかの理由で「脳が絶えず動いている状態にあると思い込んでしまった」と見られている。

その後、ロンドンの病院でデバルクマン症候群に間違いないと診断されたホートンさんは、治すために数か月間バランスエクササイズを行ったものの、芳しい結果は出ず。それならばと、もう一度「脳を騙して正常に戻せるかも」(デイリー・メール紙より)と、車や飛行機を使っていろいろな旅行に行ってみたが、それでも改善の兆しは見られなかった。

しかし、旅行をしてみたら思わぬ発見も。揺れに同調するのか、今度は「ボートや飛行機、電車に乗っているときは乗り物酔いが止まる」ことが分かったそうだ。そして、現在もめまいと戦い続けるホートンさんは「致命的ではないことに感謝しなければ」と話し、いつか正常な状態に戻ればと期待しているという。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.