ニューヨークの街中で「核融合炉」を自作、近隣住民からは不安の声も。

2010/06/25 15:32 Written by Narinari.com編集部

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核融合ができる原子炉を、自ら開発したという米国の男性が話題を呼んでいる。世界で38人目の快挙と報じられている“自作の核融合炉”(※厳密には核融合装置)だが、街中の倉庫の一室で作ったというだけに、近所の住民からは不安の声も上がっているようだ。

核融合は実用化に向けて研究が進められている分野の1つ。安全かつクリーンなエネルギー抽出法として注目され、「重水素、トリチウムからなる燃料1グラムが反応して(わずか300分の1グラム程度軽くなるだけで)石油8トン分のエネルギーが発生する」(外務省HPより)という、革新的な技術だ。現段階では、いかに多くのエネルギー抽出を行えるかが課題となっており、これをクリアできる技術の開発に期待が寄せられている。

そんな核融合原子炉を1人で作ってしまったのが、フリーのデザイナーで、グッチのウェブサイトなどを手掛けているという32歳のマーク・サップスさん。昼間は仕事をする傍ら、夜は趣味で原子炉作りを行っていたアマチュア研究者のサップスさんは、ニューヨークのブルックリン地区にある倉庫3階を作業場に、2年前から製作を始めた。費用は自己資金の3万5,000ドル(約310万円)と支援者からの4,000ドル(約36万円)で、部品はeBayで調達して完成させたという。

英放送局BBCは、サップスさんの作業場を訪れ、実際に装置を作動させている場面も映像で公開している。学校の実験室にありそうな、簡素な印象すら受ける原子炉。サップスさんが説明しながらボタンを押すと機械の中では紫色のプラズマが発生し、その温度は数千万度から数億度に達しているらしい。

欧米メディアは、アマチュアの研究者がこうした原子炉を完成させたのは世界で38人目の快挙と伝えているが、米国にはサップスさん以外にも、数年前に15歳の高校生が開発に成功した例がよく知られている。この高校生は当時「プラズマの温度は2億度に達した」(米誌ディスカバー・マガジンより)と“控えめに”話していたが、物理学者が期待のコメントを寄せ、日本でもネットを中心に話題となるなど、世界的に注目を集めたのは記憶に新しいところだ。

この2人の開発成功は、一般人が自作したという意味においてはとてつもない業績ではあるが、実用化には程遠いレベルとのこと。サップスさんも今回の成功を糧に、核融合を本格的に研究することを夢見ているそうだが、彼にはその前に大きな仕事があるようだ。

今回の核融合炉製作は「米国では合法」(BBCより)とはいえ、よく事情がのみ込めていない付近の住民にとっては大きな不安材料になっているよう。住民の中には「うちの隣でやって欲しくない」(同)と語っている人もおり、さらなる研究のためには、まずは周囲の理解を得ることが先決なのかもしれない。

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