「ガン治療拒否」の13歳少年と母親が失踪、国外逃亡の疑いで警察が追跡。

2009/05/22 20:39 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


患者とその家族の意思はどこまで尊重されるのか。今、米国で論争で巻き起こっています。発端は、ミネアポリスに住む13歳の少年がホジキンリンパ腫と診断されたにも関わらず、治療の途中で以降の抗がん剤投与を拒否したこと。両親も同様の意向だったため、病院側はそれ以上の治療が法律上で不可能になってしまったのです。

今回のニュースは「患者の権利」と「医療の倫理」という、ふたつの事柄が絡んでいます。特定の治療を選択したり拒否する権利を有する患者(未成年者の場合は、両親などの法定代理人)と、医療の正しい知識をもってして、生命を救うため最善を尽くす医師。これが真っ向から衝突してしまいました。

ちなみに両親が治療を拒否した理由は、抗がん剤治療の副作用があまりにもひどく、それに苦しむ息子が可哀想だと思ったため。少年自身も、これ以上の治療には否定的で、両親の判断は彼の意思に沿ったものだと主張しています。そのため現代医療ではなく、ホリスティック療法によって病気を治そうというオプションを選んだそう。彼らは彼らなりに、少年を救うための最善の方法を選び出そうとしていることは、間違いがありません。ただ、現代の科学ではホリスティック療法の効能は証明されておらず、医学的見解からすれば、やはり抗ガン剤の投与が少年の治療のためには最も有効と判断せざるを得ないのです。

少年の治療にあたっていた医師団は、両親の判断は「子供を危険にさらす行為」、すなわちネグレクトにあたるとして提訴に踏み切ました。また、同時に少年が文盲である事実も指摘し、治療拒否の決断の前に、彼自身にどれだけの知識が与えられたのか、という疑問も投げかけられています。

そして、裁判所も病院の意見を重視。「ガンが治療なしではどんどん進んでしまう場合」「抗ガン剤投与なら改善の見通しが立つことなどの事実があった場合」という条件付きで「強制的治療」を認めたのです。そして、少年の患部のX線などを調べた結果、医師らに治療する権利が与えられました。同時に親権を一時、両親から取り上げる判断も下されたのです。

しかし、この判決の直後。少年と母親は姿を消してしまいました。父親によると、彼らはすでに国外逃亡した可能性が高いそう。親権のない人物が未成年者を連れ去るのは、たとえ実の母親であっても「誘拐」にあたるため、彼女には逮捕状が出される事態へと発展してしまいました。可能性としてはメキシコに向かったそうで、警察が行方を追っています。

母親のとった行動は、彼女なりの「子供を想うがため」の行為なのでしょう。しかし、それが本当に少年の命を救うことになるのかは、また別の問題。一体これからどうなってしまうのでしょうか。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.