走り続けた「最後のランナー」が感動のゴール、募金活動は続行へ。

2009/05/12 12:08 Written by Narinari.com編集部

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4月26日のロンドンマラソンで注目を集めた「最後のランナー」こと、元英軍少佐のフィル・パッカーさん。昨年、出兵先のイラク・バスラでロケット弾攻撃に遭い、医師からは「二度と歩けない」との診断を受けたが、必死のリハビリの末に、現在は松葉杖を使って歩行できるまで回復している。そして自分と同じく戦場で負傷した兵士たちへ寄付する100万ポンド(約1億5000万円)を集めるのを目的に、ロンドンマラソンに参加。医師の指導で1日2マイル(約3.2キロ)ずつしか歩けないため、大会から2週間以上を経ても一人、黙々と歩み続けていた。

そのパッカーさんが5月8日、ついにゴールにたどり着いた。ゴール地点にはパッカーさんを応援した兵士や市民が出迎え、喜びをともに分かち合う姿が英米のメディアで多く報じられている。

パッカーさんの挑戦は英国で大きな注目を集めていた。英紙ガーディアンによると、チャールズ皇太子をはじめ、世界を魅了した“47歳の歌姫”スーザン・ボイルさんを発掘したオーディション番組の辛口審査員サイモン・コーウェルら、数々の有名人も応援していたという。連日多くの声援が飛び交う中で、時には警官やタクシー運転手らと歩みをともにしながら、パッカーさんは一歩ずつゴールに近づいていった。

1日2マイルとはいえ、健常者でもその距離を歩くのはなかなかの運動だ。ましてや松葉杖を使い始めたばかりのパッカーさんにとって、体に大きな負担がかかっていたのは間違いない。英紙サンでは、マラソンのスタート初日からゴール翌日までのパッカーさんの日記を紹介。それによると、初日の時点で想像以上の過酷さを思い知ったパッカーさんは、2日目に運動だけでなく寒さと湿気から痛みを感じるようになったという。しかし、同日までに40万ポンド(約5880万円)の寄付金が集まり、それが継続への力となったようだ。

中盤はともにマラソンへ参加した兵士時代の仲間や上司、消防署員、学生らの存在が励みになった模様。多くの声援に感謝の言葉を毎日のようにつづっているが、終盤は疲労が限界に近かったようで、日記の書き出しで体の痛みに触れることが多くなっていた。それでもゴールした13日目の日記では、「1年前こんな挑戦ができるとは思ってもみなかった。感謝でいっぱいだ」と喜びを爆発させている。

ゴール地点には、多くの兵士や市民が道の両側に並び、パッカーさんの完走を祝福。ボート選手として1984年のロサンゼルス五輪から2000年のシドニー五輪まで5大会連続で金メダルを獲得した「英国史上最高の五輪選手」スティーブン・レッドグレーブ氏から、完走記念のメダルが授与された。

ゴールを喜ぶパッカーさんだが、集まった寄付金は63万7000ポンド(約9350万円)。目標の100万ポンドには届かなかった。パッカーさんは、ガーディアン紙に「マラソンはゴールを迎えたが、重要なのは100万ポンドのゴールは迎えていないこと」と語り、3週間後に参加を予定している米ヨセミテ国立公園でのロッククライミングの前に、募金を呼びかける活動をしばらく続けるという。

今回のマラソンで大きな自信がついたというパッカーさんは、英紙デイリー・テレグラフに対して「これまでの人生での出来事に関係なく、自分自身にゴールを設定して達成できることが分かったのは大きい」「ケガは私にとって障害ではない」と語っている。ボートでのドーバー海峡横断、今回のマラソンに続く次のロッククライミング挑戦に、俄然やる気をみなぎらせているようだ。

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