スポーツ界に忍び寄る金融危機の影響、F1や米大リーグにも。

2008/10/12 20:41 Written by コジマ

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サブプライムローン問題を背景とした米国の住宅バブル崩壊に端を発し、世界的に波及している金融危機。「資本主義崩壊の予兆」との声が上がるなど、日を追うごとに深刻さを増している。その影響はスポーツ界にも及んでおり、先日はサッカーリーグとして世界で最も収益を上げているイングランド1部プレミアリーグが、約30億ポンド(約5220億円)という巨額の負債を抱えていることが明らかになった。イングランド・サッカー協会(FA)のデービッド・トライズマン会長は、ビッグクラブが破綻する可能性まで指摘した。

また、スペインやイタリアなどのビッグリーグでもクラブの破綻が相次いでおり、2010年のワールドカップ(W杯)開催に向けて盛り上がるサッカー界に暗い影を落としている。

こうした中で、金融危機の影響がサッカーだけでなく、F1や米プロスポーツ、さらには2012年開催のロンドン五輪にまで及んでいることを、朝日新聞が伝えている。F1ではトップチームが撤退する可能性が出てきており、ロンドン五輪では選手村の建設費用が不足する事態になっているようだ。

日本グランプリ(GP)が終了して今季も残り2戦、年間王者争いが激しさを増しているF1だが、各チームの運営を支えているのは巨額なスポンサー費用だ。F1は他のスポーツと比べて格段に広告料が高く、マシンに掲載されるものは数億円、テレビで視聴者が確認できるほどの大きさとなると20億円を超える。これはチーム運営(設備投資、開発費、人件費)に莫大な経費がかかるためで、運営費は小規模なチームでも年間100億円以上、トップチームともなると500億円以上になるという。

ところが、今回の金融危機でこのチーム運営を支える広告料の激減が予測されている。F1を主催する国際自動車連盟(FIA)は以前から経費の削減を強行に進めているが、早急な対応が必要と判断し、中国GP(10月17〜19日)終了後、各チーム代表とともにコスト削減を検討する緊急会議を開くこととなった。ウィリアムズの首脳は英放送局BBCに対して主要チームが撤退する可能性を指摘しており、今季途中で撤退した日本のスーパーアグリ同様、来季も1、2チームがF1から姿を消すかもしれない。

また、バスケットボール(NBA)やアメリカンフットボール(NFL)、大リーグなどの米プロスポーツにも金融危機の影響が出始めている。NBAでは選手の年俸、NFLでは新スタジアム建設やリーグ拡大計画への影響が指摘されおり、大リーグでは福留孝介外野手が所属するシカゴ・カブスの売却が遅れるだけでなく、安値で買収される恐れが出てきているようだ。

一方、ロンドン五輪では、選手村やメディアセンターの建設費用がそれぞれ2億5000万ポンド(約440億円)、1億5000万ポンド(約264億円)不足している。これは、民間からの融資が思った以上に集まらないことが原因だという。この2施設が建設されなくても開催に深刻な影響を与えるわけではないものの、質の低下は避けられないだろう。

いずれもサッカーほどの深刻な状態ではないが、金融危機が長引けば存続や開催が危ぶまれる事態に発展する可能性もある。とはいえ、規模を縮小してしまうとスポーツの魅力を損ないかねない。今後、そのバランスをうまく取ることが、運営者の課題となりそうだ。

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