数年前、米国で話題を呼んだ
同性愛がテーマの絵本「And Tango Makes Three」。日本でも「タンタンタンゴはパパふたり」という邦題で翻訳出版されたそうです。
これはニューヨークのセントラル・パーク動物園で飼育されていた、「ちょっとほかとは違う」ペンギンのカップルの実話を元にしたストーリー。オス同士だというのに、いつの間に寄り添うようになったサイロとロイ。他のペンギンたちが繁殖期に入ると、自分たちも卵とよく似た石を探してきて、温めるしぐさをし始めたのです。これを見た飼育係が、他の親に見捨てられた卵を彼らに与えたところ、見事孵化してメスの赤ちゃん「タンゴ」が誕生。
これを人間社会に例えて、たとえばゲイのカップルが子育てをしているのを幼い子供たちが不思議に思った時に、この本がよい解説となるのではないでしょうか。著者のジャスティン・リチャードソンは精神医療と小児科の医学博士。「子供たちが知りたがっているけれど、親には聞きづらくて、親の方も聞かれたらどう答えたらいいのか判らない」という「性」に絡んだテーマの本を、同書の他にも出版しています。
この「And Tango Makes Three」は米国図書協会の推薦を受けるなど、一部では大変評価の高い本なのですが、同時に保守的な親からは不道徳だと批判を浴びています。キリスト教徒の多い米国ですから、同性愛に対する偏見はまだまだ強いのでした。このたび同協会がまとめた昨年度の「書籍苦情ランキング」によると、学校や図書館に寄せられた苦情の中で、同書の撤去を求める意見が一番多かったのだとか。
まあ同書に限らず、一般に米文学の名作といわれているマーク・トウェインの「ハックルベリー・フィンの冒険」や、映画化もされた冒険物語「ライラの冒険 黄金の羅針盤」も、人種差別や反キリスト教だとして苦情ランキングの上位に上がっています。なので見方を変えれば、ゲイのペンギンのお話もそれだけ人に読まれているってことなのかもしれませんね。