「幽霊が出ること」を説明せず? 建物の借り主が仲介業者らを提訴。

2008/05/09 17:07 Written by Narinari.com編集部

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毎日生活や商売を営む場所だからこそ、物件探しは慎重に行いたいもの。間取りや日当たり、周辺の環境といった基本的な部分はもちろん、過去にトラブルなどが起きた「問題物件」かどうかも、慎重に検討すべき材料の一つと言えるだろう。そうした「問題物件」に関する情報は、大家や仲介業者(不動産屋)が把握していたとしても表向きには分かりにくく、契約前に一般の人が調べ上げるのは難しいため、仲介業者は「瑕疵担保責任」を負っている。つまりは、何らかの問題を抱えている物件の場合には、仲介業者は借り主に問題点などをしっかり説明する義務があり、両者納得の上で契約を結ばなければならないわけだ。

そうした「瑕疵担保責任」をめぐり、栃木県日光市内の男性が仲介業者を相手取って起こした、ある裁判が話題を呼んでいる。裁判の内容を伝える地元紙の下野新聞によると、男性は2006年2月に元料理店だった建物を賃借契約し、同年4月から飲食店の営業を始めた。その後、客などからこの物件は「幽霊が出る」と教えられ、さらに男性も次のような心霊体験をしたそうだ。

・白い影を目撃した。
・無人なのに足音や物音がした。
・人感センサーの照明が突然点灯した。

男性の訴えは、「幽霊が出る」ということを仲介業者が説明せずに契約させた、というもの。訴えられた仲介業者は「霊的な現象が建物内にあると、前の借り主から相談があり、おはらいをした」(下野新聞より)と、「心霊現象」に関する「噂」が出た建物であることを認めた上で、事前に説明をしたと主張しているという。

裁判の争点は「幽霊が出る/出ない」というオカルト的な部分ではなく、あくまでも「幽霊が出るという噂を仲介業者が伝えたか」という部分。ただ、この物件で過去に自殺者が出たなど、明確な「借り主に精神的な負担を強いる事象」があった場合には、仲介業者の説明不足を理由に借り主側が勝訴した判例が存在しているが、単に「噂」レベルの話を伝える責任があるのかどうかは、判断に迷うところだろう。

また、借り主の心霊体験にしても、「白い影を目撃した→借り主の見間違い」「無人なのに足音や物音がした→家がきしんでいるだけ」「人感センサーの照明が突然点灯した→電磁波や風の影響、犬や猫でも有り得る」との解釈もできるため、そもそも心霊現象などないとの立場に立てば、「噂」を真に受けて伝える義務はないとも考えられる。その際には、「言った/言わない」の水掛け論の果てに、仮に仲介業者が「噂」を伝えていなかったとしても、責任が問えるかどうかは微妙なところだ。

裁判所がこのあたりをどう判断するのか、判決の行方はいかに。

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