放射線物性の世界的権威、火の玉研究の第一人者である早大名誉教授の大槻義彦氏。その一方で、オカルトを徹底的(科学的?)に批判することでも知られており、これまでにUFO研究の大家である矢追純一氏や霊能者の故・宜保愛子氏らと“対決”しているのだ。最近ではその懐かしい風景を中古車買取会社の「ガリバー」がCMで再現し、話題となっている。
その大槻氏が、またもやオカルト批判を展開している。今回の標的はスピリチュアル・カウンセラーの江原啓之氏。「江原今様イタコ」なるニックネームをつけて自身のブログで霊視を「インチキ」とし、その批判は同氏を支持する文化人たちにも及んでいるのだ。3月には批判本「江原今様イタコの嘘(仮題)」(鉄人社)を出版するという。
もともと江原氏に対する世間の評価は批判的なものが少なくなかったのだけど、昨年のフジテレビ系「FNS 27時間テレビ」のコーナー企画「ハッピー筋斗雲」や、テレビ朝日系「オーラの泉」で事実と異なる霊視をしたことが週刊誌によって報じられてからは、特にその傾向が強まっているのはご存じのとおり。
そんな江原氏に目を付けた大槻氏は、批判本の執筆に当たって江原氏に関する資料を徹底的に調査。すると、「調べれば調べるほど、驚きあきれるもの」だったという。「江原今様イタコ」というニックネームはその手口が青森県・恐山で死者の口寄せをしているイタコと瓜二つなことから付けたそうで、霊視については「事前調査の成果」と断じている。昨年4月のエントリーでは、「事前調査の霊能力は一種のヤラセですから、今回の『あるある事件』への批判の拡大によって必ず、江原番組・江原出版も馬脚をあらわすでしょう。」と予言めいた意見を述べていたのだ。
さらに、「自分には小さいときからオーラが見えた。小学校のとき、後ろの席に座らされると前の生徒たちのオーラで黒板が見えなかった。」という江原氏の発言に対し、「前の席の子供で黒板が陰になるのは、せいぜい4〜5名だ。それならコンサートホール・映画館・電車の中などでは、江原はまったく物を見ることができなかったはずだ。(笑)」と揶揄。また、「オーラの泉」の1コーナー(「あなたのオーラ」)でオーラの色を診断していることについては、「まず、光や色の3原色の原理をまったく無視しているではないか。それとも彼の目にはプリズム、または分光器でも付いているのか。(笑) こんな目なら3原色のテレビは、彼の目にはとんでもない原色に映り、カラーテレビの機能はメチャクチャとなる。」と“科学的”に批判し、「なんとアホ、インチキか。」とバッサリ斬っているのだ。
しかし、ブログやテレビ番組で江原氏の批判をするとマスメディアから干されたそうで、「昨今の霊能スピリチュアル番組はテレビだけではなく、出版をも巻き込み、江原批判はタブーとなっています。つまり『江原タブー』。これはオウム真理教事件の前に似ています。」とし、その原因として「宜保愛子のときと違って江原には妙なイカサマ文化人が多数応援しているからです。名だたる出版社がどこもこれらの文化人に気を使って江原批判を受け付けません。」と断じている。
このことから、批判は出版社や読者、さらに江原氏を支持する文化人にも向けられ、特に後輩である脳科学者の茂木健一郎氏に対しては「この科学者(自称)が、あろうことか今様イタコと一緒に本を出したり、各地の講演に一緒に出かけたりしているのですから、泣くにも泣けません。」と嘆いている。ほかにも作家の林真理子、室井佑月、桐島洋子、よしもとばなな、漫画家の柴門ふみ、ピアニストのフジ子・ヘミングなどの実名を挙げて「文系の文化人のイカレ様はすごいものです。」としているのだ。
J-CASTニュースではそんな大槻氏へのインタビューを行っており、「江原霊視」やテレビ番組でのさまざまな疑惑、テレビ局への批判などを語っているので、興味のある人は大槻氏のブログと合わせてぜひ一読を。
ただ大槻氏は、4月に出版される自著「急げ、理系への道」(NHK出版)を「まじめに書きました」とし、「それなら他のオカルト本・ゴルフ本はまじめでなかったのか? そのとおりです。まじめでなんか書けません。オカルトを批判するなどまじめにできますか? 霊を呼び出し、その霊と語りあい、体からオーラという光が出て、その上体からエクトプラズマなる煙が出る、などという馬鹿をまじめに批判などできますか。」と述べている。UFOのときと同様、あくまで“物理学者として非科学的なものが世間に持ち上げられることを看過できない”というスタンスのようなのだ。