朝青龍の荒稽古にやくみつる氏が苦言、委員からも批判続出。

2007/12/06 09:18 Written by コジマ

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今年6月26日、大相撲・時津風部屋の序ノ口力士、時太山(本名・斉藤俊さん)が稽古後に死亡するという悲しい事件が起きた。これまで八百長疑惑に横綱朝青龍の仮病疑惑など土俵外での“不祥事”に翻弄されていた大相撲だけど、集団暴行よって死なせてしまったことや部屋ぐるみで隠蔽しようとしていたことが疑惑として浮上するなど、これまでのものとは一線を画すような衝撃的な事件だったのだ。

この事件の真相究明と再発防止を検討するよう管轄官庁である文部科学省から強い要請を受けて発足したのが、再発防止検討委員会。伊勢ノ海親方を委員長に、各一門を代表する親方のほか、日本アマチュア相撲連盟の塔尾武夫副会長、NHKの山本浩解説委員、漫画家のやくみつる氏らが外部有識者委員として参加し、全13人体制で調査を行っているのだ。

12月5日には3回目の会合が開かれ、53の相撲部屋に実施した生活指導や稽古に関するアンケートの結果を公表したのだけれど、この席上で問題に上がったのが、冬巡業で復帰した朝青龍の荒稽古。会見では、やく氏が「横綱のけいこはけがにつながりかねない。ハッスルプレーのようなものがあった。ああいうことでは下の力士に示しがつかない」(サンケイスポーツより)と指摘し、近く伊勢ノ海理事長が師匠会で報告することになったのだ。

12月2日に始まった冬巡業で仮病疑惑の謹慎から復帰した朝青龍は、謝罪会見や臨時横綱審議委員会への出席、先代佐渡ヶ嶽親方の墓参りをするなど、会見では報道陣に対して厳しい視線を浴びせながらも、基本的には謹慎前と一転して神妙な態度を取っていた。それは冬巡業が始まっても変わらず、詰め掛けたファンには愛想を振りまき、久しぶりの土俵の感触を楽しんでいるかのようだった。報道陣への態度も軟化し、弁舌も滑らかに。朝青龍のうれしそうな顔を見るのは久しぶりだったので、本格的に復活したことを実感したのだ。

ところが巡業も最終日を迎えた4日、稽古中に同じモンゴル出身の平幕鶴龍に送り釣り落としややぐら投げという荒技を見舞い、足首をねんざさせてしまった。これはテレビでも放送されたので、「またやってしまったか……」という感想を抱いた好角家も多かったのではないだろうか。朝青龍は出稽古でたびたび相手力士にケガを負わせており、以前から問題化していたのだけど、謹慎前に戻り過ぎたような印象を全国に与えてしまったのだ。

今回、再発防止検討委員会で問題になっているのはこの荒稽古で、やく氏は同委員会の趣旨から外れているとしながらも、「下位の力士に力を示しているだけで、いたずらに危険なもの。けいこではない」(スポーツ報知より)、「(本人が)自覚していないとまたどんなことが起きるか分からない。再発防止という意味では趣旨に合う」(スポーツニッポンより)と、強い口調で横綱に苦言を呈した。

これに対して、ネットではやく氏を批判する声が強かったのだけど、実はこの問題提起は会合時に親方衆から出たもので、やく氏は朝青龍に注意できないかと提案しただけなのだそう。また、「上の人がやると、やられた人も同じことをやる。悪い連鎖が出てしまう」(デイリースポーツより)としている山本氏ら他の委員も同調していたようなのだ。伊勢ノ海委員長も「『抜き上げ』という取り口ではあるが、相手は力を抜いている状態で、危険であることは確かだ」(毎日新聞より)としている。

たしかに「受け」の状態にある相手を土俵にたたきつける行為は横綱として感心できるものではないし、テレビで見ていたぼくもいろんな意味でヒヤっとしたのだけど、朝青龍の行動に過剰反応している感も否めない。いずれにせよ、朝青龍は全相撲関係者が納得するような“優等生横綱”にはなれないような気がするのだ。ベビーフェイスの白鵬がいることだし、こうした存在があれば角界も盛り上がると思うのだけれど……。

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