利用者からの投稿動画が楽しめる「YouTube」と、投稿動画にコメントを付けられるサービスの「ニコニコ動画」。どちらもネットの新しい楽しみ方を教えてくれ、いまではネット生活に欠かせない存在となっているのだ。開設以来、大人気のこの2サービスだけど、ぬぐいきれなかったのがそのグレーな部分。ともに利用規約で著作権法違反の投稿を禁じているのだけど、なかなか規制できないでいた。
そこへ、10月25日放送のネットラジオ番組「偽・うpのギョーカイ時事放談SUPER!」で、アニメクリエイターらが両サービスの違法性を激しく訴えたことが話題となった。そのクリエイターたちの訴えは、作品が違法投稿されることによってDVDが売れなくなるとしており、投稿者に向けて「オレ達を殺す気か!?」「こんなこと言いやがって!と言うヤツもいるだろうと思うけど、(一つの作品を作るのに数百人の スタッフが携わっていて)本当に食えなくなるんだよ、みんな」(J-CASTニュースより)など、激しいながらも理解を求めていた。さらに、話が動画投稿サイトに及ぶと「違法アップの場を提供している会社に対しての過失責任は問われるべきだ」(同)としており、これを受けてネットではかなりの議論が行われていたのだ。
こうした中、YouTubeとニコニコ動画が、投稿動画で使用されている日本音楽著作権協会(JASRAC)管理楽曲の利用料を支払うことに向けて動き出した。現在は料率などを検討中で、暫定的ながらも年内に契約が結ばれる予定なのだそう。
この契約を結ぶと、これまで著作権法違反とされていたライブなどでJASRAC管理楽曲を演奏した映像や、レコード会社が公式に配信する楽曲などを合法的に投稿できるようになる。現に、この発表と同時にEMIミュージック・ジャパンがYouTubeに公式サイトを開設し、スパイス・ガールズやダフト・パンク、カイリー・ミノーグの映像を配信した。JASRACとの契約が完了すれば、日本のミュージシャンたちもYouTubeやニコニコ動画で楽しめるようになるかもしれないのだ。
そこで気になるのが楽曲の利用料。JASRACが動画投稿サイトの楽曲利用条件で示している「一般娯楽番組」の料率である「サイト収入の2.0%」(音楽は同2.8%)を基準に検討するそうだけど、ITmediaによると、JASRACは過去の利用料も請求したいようで、それを考慮してYouTubeでは国内アクセス分に課金することも検討しているのだとか。うーむ、そうなると利用者が激減しそうだけど……。ちなみに利用許諾では、利用された楽曲とリクエスト回数をJASRACに報告するとされている。
とはいえ、「廃止」まで叫ばれていた両サービスの違法性が薄らぐだけに、利用者にとって歓迎すべきことなのかも。動画を見る後ろめたさもなくなるわけだし。ニコニコ動画ではエイベックス・グループが権利を保有する動画を配信することも発表しており、JASRACとの“和解”によって両サービスがさらに発展することを期待したいのだ。