プリンスがリリース前の新作を新聞付録に、英音楽業界は猛反発。

2007/07/16 23:57 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


さまざまなジャンルの音楽を取り入れ、1970年代から常に第一線で活躍し続けている米ミュージシャンのプリンス。ワーナーとの確執や読み方不明のシンボルマーク名義(The Artist Formerly Known As Prince; 元プリンス)で作品を発表するなど、多くの話題を振りまく元祖お騒がせミュージシャンでもあるのだ。

驚異的なペースでアルバムをリリースすることでも知られており(これもワーナーとの契約が一因となっていた)、昨年3月に発表したアルバム『3121』に続いて今月25日(日本時間)には最新作『Planet Earth』をリリースする予定なのだけど、発売前のこのアルバムが15日付の英日曜紙の付録として無料配布された。このことに英音楽小売業界が猛反発しており、アルバムの流通を担当しているSony/BMGは英国内の販売中止を発表しているのだ。

アルバムが付属したのは、英日曜紙メール・オン・サンデー。同紙は毎週日曜日に発行しているタブロイド紙(227万部発行)で、今回は約300万枚が付録として無料配布されたのだけど、同紙の価格は1部1.4ポンド、約350円で超有名ミュージシャンの最新作が手に入ることになったのだ。発売予定の全トラックが収録されており、総計で約25万ポンド(約6210万円)の価値があるとされているのだけど、メール・オン・サンデー紙はそれ相応の金額をプリンスに支払ったとしている。またプリンスは、8月から行うロンドンツアーのうち、2公演でも『Planet Earth』を無料で配布する予定なのだとか。

こうしたことから、英国の小売業界は猛反発。小売業者協会の会長は「プリンスのキャリアをサポートしてきたすべてのレコード店に対する侮辱である」という抗議コメントを発表し、「プリンスは狂っている」と非難するレコード店も続出しているようなのだ。うーん、たしかにレコード店はインターネットなどに押され気味で危機感を募らせているだけに、プリンスの動きが広まっていったら死活問題になるのだ。Sony/BMGもかつてプリンスが呼ばれていた名称を持ち出し、「“かつてプリンスと呼ばれていたアーティスト(The Artist Formerly Known As Prince)”は、こんなことをしていたらすぐに“かつてレコード店で手に入れることができたアーティスト(Artist formerly available in record store)”になってしまうことが分かるだろう」と揶揄している。

一方、プリンス側は「レコード会社の投機的ビジネスに付き合う必要はない」「(プリンスの)音楽を聴きたいと望む多くの人に直接届けたいだけだ」とコメントし、メール・オン・サンデー紙側も「われわれはレコード店を廃業させたいわけではないが、彼らは古い時代のままでビジネスを発展させる十分な努力をしていない」としている。さらに、同紙はこの無料配布分をチャートに反映させるように申請しているようなのだ。

この背景には、前作『3121』が英国での販売数が8万枚と振るわなかったことがあるのだけど、こうした動きを容認するミュージシャンは世界的に増えており、どこの国でも小売業界はさらに苦しくなっていきそうなのだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.