皆既日食で鹿児島の離島に数万人が殺到、島民の混乱も懸念。

2007/05/08 21:56 Written by コジマ

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2009年7月22日、今世紀最大級の皆既日食がパキスタンから太平洋上にかけて、そして日本でも観測される。部分日食や金環日食と違い、太陽全体が月に隠れる皆既日食が観測できることは珍しく、日本での観測は63年の北海道以来、46年ぶり。しかも、今回は日本での観測が世界で最も条件がよく、世界の天文ファンに注目されているのだ。

その中でも熱い視線を送られているのが、屋久島と奄美大島の間に浮かぶ12島から成るトカラ列島。国内でも完全な皆既日食が観測できるのは種子島の南端から奄美大島北部の間だけで、特に、トカラ列島は皆既日食の中心地帯に位置しており、悪石島沖では世界最長となる6分39秒。悪石島でも6分25秒観測でき、最短の口之島でも5分44秒となっているのだ。

トカラ列島は、行政区分では鹿児島県鹿児島郡十島村。12島中5島が無人島で、本土との往来は週2便しかない村営フェリー「としま」のみ。JTBによる「日本の秘境100選」に選ばれており、最高クラスとなる「最高僻地5級地」に指定されている離島なのだ。

この離島に、2年以上先のイベントなのに宿泊施設には天文ファンの予約が殺到。すでに予約で満室になった民宿もあり、村役場は数万人の来島を予想している。通常の過疎地ならば、「うれしい悲鳴」となりそうだけど、この秘境に限っては本当の「悲鳴」となっているようなのだ。

というのも、本土との交通手段は前述のとおり週2便のフェリー(定員約200人)のみで、宿泊施設も有人の各島に民宿が2〜5軒ある程度。全島で最大315人しか宿泊できないところに数万人も押し寄せたら、それこそパニックが予想される。また、生活物資や郵便物もフェリー頼りで、通常でも台風の影響で欠航が続けば島から食料がなくなるという状態。さらには、飲食店や島内の交通手段もなく、公衆トイレも少ない。そうした事情のところに普段以上の旅行者が訪れては、島民の生活も脅かしかねないのだ。

こうしたことから、村役場ではフェリーの特別便運行や簡易宿泊施設、キャンプ場などで対応することを検討しているのだけど、村役場の職員は26人だけ。とてもじゃないけど対応しきれない。福満征一郎副村長は「たった6分何十秒のためだが、大変な話。どう頑張ったって『よくやった』と言われそうにない。参ってます」(日刊スポーツより)と、心底困り果てているようなのだ。

また、トカラ列島を特集しているサイト「トカラ列島〜日本最後の秘境〜」では〈まだ先のことであるが、船の便の確保(特別便)と簡易宿泊施設・キャンプ場等の整備など、これは小さな十島村だけでは対応できないであろうと思われる。県レベルでの対応が望まれるところである。〉と記されており、県の支援が得られていないことを示唆している。

今年7月22日までには具体的な対応策を発表する予定だけど、現時点では打つ手が決まっていないのだそう。世界から注目されるイベントなだけに、トカラ列島をアピールするチャンス。これなら県単位で対応してもよさそうだけど……。

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