継投の軸としてチームの日本一に貢献した日本ハムの岡島秀樹投手。巨人時代にも左の中継ぎ・抑え投手として重宝されたのだけど、成績が安定せず、昨季オフには減額制限ぎりぎりの年俸40%ダウンを提示され、受け入れていた。それだけでなく、今季開幕直前に、実松一成捕手、古城茂幸内野手との1対2の交換トレードで日本ハムに移籍し、岡島投手はどうなっちゃうんだろうと、同学年なために心配していたのだ。
ところが移籍後、その寡黙なキャラクターと共に、阪神の投手陣を育てた佐藤義則投手コーチのもとでフォームを変更。制球難を克服し、武田久投手の後を受け持ちマイケル中村投手へつなげる中継ぎ投手として大活躍。成績も昨季の42試合、防御率4.75から、今季は55試合、防御率2.14と向上し、北海道のファンは来季の活躍も期待していたのではないだろうか。
しかし、岡島投手は今年がフリーエージェント(FA)権獲得年。FA宣言し、在京球団もしくは米大リーグへの移籍を希望したのだ。11月23日には大リーグ7球団からオファーを受け、メジャー入りは確実となっていた。
そしてついに、移籍先が決定したのだ。契約したのは、西武の松坂大輔投手と契約交渉中のボストン・レッドソックス。年俸は2年で300万ドル(約3億4500万円、出来高50万ドル含む)と、巨人時代の最高額を上回る破格の待遇なのだ。3年目は球団が175万ドルで選択権を持つとのこと。オファーした7球団のなかにはレッドソックスより高い年俸を提示してきたところもあったようだけど、複数年契約とFA宣言後すぐに交渉してきたことが決め手となったようなのだ。
レッドソックスの本拠地フェンウェイパークで入団記者会見を行った岡島投手は、背番号40のユニホームを手にし「岡島秀樹です。ボストンが好きです。『オカジ』と呼んでください」と英語で挨拶し、移籍については「大リーグのことなど考えたこともなかったが、すごいチャンスだと思った。日本の球団よりも大リーグの方が高く評価してもらい、FAになったとき、最初に話をもらい、ボストン入りを決めた。食べ物もおいしいし、街もきれい。ここでよかったと思う」(
ZAKZAKより)と、夢の舞台での活躍に胸を躍らせているようなのだ。
破格の年俸からも分かるように、球団も岡島投手の活躍にかなり期待しているようで、クレイグ・シプリー国際スカウト部長は「何年も彼を見てきたが、高い位置から投げ込むカーブと制球力が素晴らしい。速球もコーナーに決められるし、2種類のスプリットを持っている」「日本では重要な試合をいくつも経験し、先発や抑えを含めてさまざまな場面で投げている。ワンポイントで出てくる左腕とはわけが違う」(
MAJOR.JPより)と絶賛。ワンポイントではなく、中継ぎの軸として起用するようなのだ。
大リーグは慢性的に左投手が不足しており、レッドソックスも例外でない。加えて本拠地のフェンウェイパークは「グリーンモンスター」と呼ばれる巨大フェンスがある左翼と違って、右翼フェンスは低く、左打者にとって格好の“餌食”。岡島投手には、こうした左打者を封じる戦力として期待しているのだろう。
また、レッドソックスは今季35セーブを挙げたルーキー守護神ジョン・パペルボン投手がシーズン終盤に故障し、プレーオフ進出を果たせなかった。また、パペルボン投手が先発に転向するため、新たなクローザーの確立が喫緊の課題となっている。そこで名前が挙がっているのが、テキサス・レンジャーズで今季32セーブ、防御率2.11と大活躍中の大塚晶投手。ドジャースのベテランオールラウンドプレーヤー、J・D・ドルー外野手の獲得により、不要となった主砲のマニー・ラミレス外野手が交換トレード要員になるそうで、レンジャーズとしても悪い条件ではない。もし大塚投手が移籍してきたら、松坂−岡島−大塚という日本人リレーがメジャーの舞台で披露されることとなるのだ。
しかしレッドソックスのセオ・エプスタイン・ゼネラルマネジャーは、岡島投手の入団記者会見の場で「松坂と含め今季は日本人選手2人でいく」(
ZAKZAKより)と、大塚投手の獲得を否定しているのだ。
それにしても、今オフに移籍する日本人は、井川慶投手(ニューヨーク・ヤンキース)、松坂投手(レッドソックス)、岡島投手(同)、岩村明憲内野手(タンパベイ・デビルレイズ)と軒並みア・リーグ東地区に集中している。
ソフトバンクを自由契約になったフリオ・ズレータ内野手をヤンキースが獲得する動きもあるようで、すでに活躍しているヤンキースの松井秀喜外野手やデビルレイズの森慎二投手と共に、同地区の日本での注目度がいっそう高まりそうなのだ。
考えてみれば、井口資仁内野手のいるシカゴ・ホワイトソックス(中地区)や、イチロー外野手と城島健司捕手がいるシアトル・マリナーズ(西地区)、大塚投手のいるレンジャーズ(同)、多田野数人投手のいるオークランド・アスレチックス(同)と、ア・リーグの日本人選手は多い。今季のチャンピオンリングを手にした田口壮外野手(セントルイス・カージナルス)をはじめ、ナ・リーグの日本人選手たちもがっちり活躍して日本での注目度を上げて欲しいのだ。