文化庁が日本語調査、「怒り心頭に達する」など慣用句の誤用増加。

2006/07/26 22:59 Written by コジマ

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普段なにげなく使っている慣用句、さらっと会話に混ぜると知的な印象を与えるけど、間違った使い方をすると笑い者になってしまうのだ。そんな慣用句の誤用など日本語に関する調査を文化庁が行ったところ、「激しく怒る」という意味の「怒り心頭に発する」の誤用である「怒り心頭に達する」を使っている人が7割を超えていることが明らかになったのだ。

調査によると、「発する」を使う人は14.0%だったのに対し、「達する」を使う人は74.2%。5倍以上にものぼったのだそう。「心頭」とは心(の先)という意味。「心頭滅却すれば火もまた涼し」の「心頭」で、心で発生する怒りが心に「達する」というのでは意味が通らなくなってしまう。ちなみに、ぼくが使っている変換ソフトATOKでは、「怒り心頭に達する」と打ち込むと≪「怒り心頭に発する」の誤用≫と、ちゃんと教えてくれるのだ。

また、調査では「周囲の人に明るく振る舞う」という意味の言葉である「愛嬌を振りまく」も、「怒り心頭〜」ほどではないものの、「愛想を振りまく」と誤用している人のほうが多かったのだそう。「はっきりと言わない」という意味の「言葉を濁す」の場合は本来の使い方が66.9%と多かったものの、「口を濁す」と誤用している人も27.6%にのぼったのだとか。この2つはATOKもカバーしてくれないなあ。

ぼくが新聞社に入社したとき、誤用が多そうな慣用句には特に注意するようにかなり厳しく言われたのだ。それなのに、Narinari.comでもやってしまっていた。それも誤用注意の筆頭に挙げられるような間違いを……。昨年の今ごろお伝えした「大自然のなかの音楽フェスティバル、フジロックを体感 その1。」という記事中で、「いやがおうにも」という表現をしてしまったのだ(あ、探さなくていいですよ)。正しくは「や(弥)が上にも」。「否応なしに」と混同している典型的な誤用なのだ。うーん、恥ずかしい。

このほか誤用しやすい慣用句として、
×汚名挽回  ○汚名返上、名誉挽回
×旗色鮮明  ○旗幟鮮明(読み方も「きしせんめい」)
×気の置ける仲間  ○気の置けない仲間
×口先三寸  ○舌先三寸
×食指を伸ばす  ○食指が動く、触手を伸ばす
×飛ぶ鳥跡を濁さず  ○立つ鳥跡を濁さず
×熱にうなされる  ○熱に浮かされる
×胸先三寸  ○胸三寸
などなど。

ぼくがいた会社でも「独壇場」を「土壇場」と言ったり、「相殺(そうさい)」を「そうさつ」と読んだりしている人がいた。こうした人はたいがい堂々と言うものだから、間違っていることを教えるべきかどうか迷ってしまうのだ。「言葉は流動的なもので、時代によって使い方が変わっていく」というのを聞いたことがあるけれど、ほんの一端ながらマスコミ業界に身を置く者として、こうした正しい慣用句については一生をかけてでも勉強していきたいのだ。

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