以前コジマもお伝えしたことがある、
全米で開始されたサービス「ワイヤレス・アンバー・アラート」。これは子供に関する事件の情報を携帯電話のメールに速報するシステムで、行方不明や誘拐などの事件をその地域に速報で流すことで人々の情報提供を促すことを目的としています。
この「アンバー・アラート」の他にも、
「メーガン法」といって、1度でも性犯罪の前科のある者に対しその住居の登録を一生にわたり義務付け、その住所や氏名を一般市民に公開する法律があります。こうすることで地域に性犯罪者がいれば一目で知ることが出来、子供を近づかせないようにしようと親も注意を払うことが出来るのです。とにかくアメリカ市民の子供に対する犯罪の不安感、そしてそれを未然に防ごうとする意識は、日本のそれとは比べ物にならないのです。
しかしそんなアメリカ人の感情を逆なでするような出来事が、ワシントン州で起こってしまいました。4年前、当時6歳の女の子に性的暴行をはたらいたとして逮捕されたジェイムス・デグロフ被告。彼が有罪判決を受けた2003年の裁判が裁判官の不手際から「無効」とされてしまい、再度新たに行われることになったのです。2度目の裁判となれば、被告側の弁護士も以前より自分たちに有利になる情報が沢山集められますし、被害者となった少女を含む証人たちの記憶もあいまいになる可能性があります。デグロフ被告が逆転無罪となることも有り得るのです。
この最初の裁判が無効になったいきさつは、当時の裁判官と陪審員との間に「不当なコミュニケーション」があったというもの。アメリカの法律では、裁判官は裁判が正当に行われているかどうか判断する存在であり、判決は複数の陪審員が話し合って決定します。裁判中はお互いに判決に影響しそうな言動を与えることは禁止されており、この決まりを破ったことが今回の「無効」決定の決め手になったのです。
そしてその「判決に影響しそうな言動」という事実に含まれたのが、なんと裁判官が陪審員から裁判中に受け取った「ドーナツ」。たぶんおやつ代わりにもらったとか、そういうことなんでしょうが、どうやら「賄賂」ということになってしまったのだとか。
ただでさえ性犯罪を扱う裁判は、その被害者にとって証言台で忘れたいであろう経験を詳しく話さなければならず、それが精神的に相当辛いものだと聞きます。ましてその被害者が子供だった場合、そのトラウマは想像を絶します。ひとつのドーナツがそんな不幸を引き起こしてしまったなんて、被害者とその家族にとってはなんとも切ないことだと心が痛まずにはいられません。