4月2日生まれと翌年の4月1日生まれでは約1年の差があるのだけれど、日本の制度では同じ学年に属する。幼少時の1年の差はけっこう大きく、1月1日〜4月1日に生まれたいわゆる「早生まれ」の人は、成長期における同学年内での競争で不利とされてきた。しかし今回、一橋大学大学院労働経済学・川口大司助教授の研究によると、その後の学歴までこの差が影響している可能性が示されたのだ。
幼少の頃は、年齢が少ししか離れていなくてもその差が如実に出る。特に運動面は顕著で、ぼくも4歳上の従兄弟とよくケンカをし、毎回ボコボコにやられていたのだ。あの頃は全く勝てる気がしなかったなあ。こうした運動能力がのちにもたらす影響は大きく、
バレーボールガイドの「
早生まれは損か」というコラムによると、例えば幼少の頃から過酷な競争を強いられる野球では、甲子園出場選手でもプロ野球選手でも4月生まれを先頭に右肩下がりになっている。同じ学年でも運動能力が劣るとされている早生まれの人は、球拾いなどをさせられてきちんとした指導を受けられず、結果として競技の継続を諦めてしまうケースが多いようなのだ。この傾向は、
サッカーやバレーボールでも見られるという。
しかし、今回の研究結果は、のちのちまで影響を及ぼさないとされていた学力まで早生まれの不利を指摘しているのだ。研究に当たった川口助教授は、総務省が2002年10月に行った就業構造基本調査の対象者100万人のデータを解析。25〜60歳の男女各26万人分を抽出し、生まれ月ごとに4年制大学卒業の比率と、教育を受けた平均年数を分析した。
その結果、4大卒の比率は、4月生まれが男性28%、女性10%だったのに対し、早生まれは男性25〜26%、女性8〜9%、教育を受けた平均年数でも4月生まれ(男性12.8年、女性12.5年)が早生まれ(男性12.6年、女性12.3年)より多く、早生まれの不利が示されたのだ。
ぼくはちょうど真ん中の9月生まれなのでこうした不利感は感じたことがなかったけれど、たしかに1年の差は大きい。旧厚生省が平成11年に調査した「
月別にみた年次別出生数」によると、出生数はすべての月でほぼ均等。にもかかわらず、こうした結果が出たということは、やはり早生まれは学歴でも不利になるのだろうか。これは私感だけど、幼少時から同級生と比べられて、運動面でも学業面でも「ダメ」というレッテルを貼ってしまうことに問題があるような気がするのだ。
生まれ月による有利・不利はどこで分けても発生するため、現在の制度を変え改正しても解決されない。ただ、
慶應幼稚舎などでは、入試の際は生年月日順にグループ分けして不利を解消しようとしている。こうした配慮は今後いろいろな場面で行われるべきではないだろうか。まあ、30歳を過ぎた今となっては、早生まれの同級生に対して「年を取るのが遅くていいなあ」とうらやんでいるのだけど。
余談だけど、東京大学三浦悌二・名誉教授は「生まれ月学」というものを提唱している。それによると、生まれ月によってかかりやすい病気や多い血液型、寿命の違い(早生まれは長生きだとか)があるそうなのだ。和光大学の
サイトに「生まれ月学のすすめ」が全文掲載されているので、長文だけど興味がある人はぜひ。