銅高騰で英造幣局が異例の警告、「硬貨を溶かすな」。

2006/05/13 16:57 Written by コジマ

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中国、インドの工業発展による急速な需要増加と、投機筋の資金流入によって、金、アルミニウム、亜鉛、ニッケルなどのいわゆる非鉄金属の国際価格が急伸しているのだけれど、特に銅は11日のロンドン金属取引所(LME)先物相場で1トン8800ドル(約97万円)を突破し、25年ぶりに高値更新している。そんな銅高騰を受け、英国の王立造幣局が13日、通貨としての額面以上の価値になっている1992年以前鋳造の1ペンス(約2円)硬貨と2ペンス硬貨を、溶かして悪用しないようにと、異例の警告を発表したのだ。

コンピュータをはじめとする電気製品の導線として需要から銅の価格は近年上昇傾向にあったのだけれど、中国やインドの需要拡大で今年に入ってから80%以上上昇、これに目を付けた投資家がこぞって資金を注入したために、11日には25年ぶりの高値更新となったのだ。途上国では導線目当てに電話線が盗まれるという犯罪も増加しているのだそう。

この銅高騰受け、92年に製造された1ペンス硬貨の価値が1.65ペンス、2ペンス硬貨の価値が3.3ペンスと上昇しているのだけど、英王立造幣局は「硬貨の変造は違法で非現実的な行為」(産経新聞より)という、異例の警告を発したのだ。

92年以降に鋳造された1ペンスと2ペンスの硬貨は鋼鉄に銅メッキをしているそうだけど、それ以前のものは銅が97%と純度が高く、実際の価値は額面よりも高くなっている。例えば、現在8800ドル(約97万円)となっている1トンの銅を得るために必要な1ペンス硬貨は29万枚だけ。額面上は2900ポンド(約60万円)だから、約37万円も差額が出てしまうのだ。

現在、英国で流通している1ペンス硬貨は103億6000万枚、2ペンス硬貨は63億3900万枚だそう。王立造幣局は92年以前のものの割合を明らかにはしていないものの、硬貨を大量に引き取って銅を抽出する個人や業者が現れることをけん制する形となったのだ。日本でもそうだけど、英国では硬貨を許可なく故意に損傷すると罪になる。

一方、92年を境にした選別や大量の硬貨の保管など工程の煩わしさの割りには儲けが少ないこと、一度製品にして溶解させた金属は価値が下がることなどから、こうしたことを行う個人・業者は発生しないという見方もあるそうなのだ。

それにしても、価値が低い割りにかさばるので一時は廃止の声すら上がっていた1ペンスと2ペンスの硬貨。今回の高騰は、虐げられてきた低価値硬貨の逆襲なのかもしれないのだ。そういえば、日本でもギザギザのついた10円玉(いわゆる“ギザ10”)や、明朝体で「日本國」と書かれた5円玉(いわゆる“フデ5”)なんかがあるなあ。こっちの額面以上の価値高騰は、製造数が少ないからだけど。

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