北海道文教大の日本語相談室が盛況、開設4カ月で質問100件以上。

2006/03/27 23:03 Written by コジマ

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明治大の齋藤孝教授による「声に出して読みたい日本語」(草思社)やフジテレビ系のバラエティ番組「タモリのジャポニカロゴス」など、正しい日本語をテーマにした書籍やテレビ番組の影響で日本語への関心が高まっているなか、北海道文教大(恵庭市)外国語学部日本語学科の岡本佐智子教授ら5人が昨年11月に開設した「日本語なんでも相談室」が盛況のようなのだ。全国紙やテレビの全国放送で取り上げられたわけでもないのに、現在までの4カ月で寄せられた質問は100件以上。日本語への関心の高さとともに、普段使っている言葉に不安をおぼえている人が多いことを映し出している。

「日本語なんでも相談室」は、日本語に関する疑問に岡本教授らが電子メールを介して答えるもので、大学が蓄積した知識や研究成果を地元市民に還元する目的で企画されたのだとか。北海道文教大公式サイトの同教室のページ(公式サイトは近日開設予定)によると募集地域に限定はないので、恵庭市民以外でも応募は可能なのだ。この予想以上の反響に、学科長の岡本教授は「言葉は社会を映す鏡。社会の不安定さを反映し、日本語が揺れている。多くの人が言葉の正しさの基準点を求めているのではないか」(毎日新聞より)としている。言葉の正しさの基準点……。ぼくらのような文章に携わることを生業にしている人間でも不安なもので、いくら年を重ねても日々新たな発見があるのだ。

さて、どんな質問が寄せられているかをのぞいてみると、
「女性をデートに誘ったら、『行けたら行くね』と返事をされた。可能性はどれくらいあるのか」
「好きな女性と話す時、『おれ』と『ぼく』のどちらが良いか」
なかなかユニークな質問なのだ。
これに対して同相談室は、
「期待は薄い。『たら』が使われた条件文は責任逃れの際によく使われます」
「強さを見せたいのなら『おれ』、品格を保ちたいのなら『ぼく』が良い」
と回答。うーん、なるほど。ぼくは品格を保ちたくて「ぼく」を使っているわけではないけど……。

このほか、「なぜ、物を贈る時『つまらない物』と前置きするのか」「『オヤジ』とはどんな人のことか」「『全然』+肯定でもよいのか」や、ら抜き言葉、方言に関する質問が寄せられているとのこと。「依存」を「いそん」と読むか「いぞん」と読むか(ただしくは「いそん」)、同じく固執は「こしゅう」と「こしつ」どっちが正しいか(「こしゅう」が正しい)といった、読み間違いが慣習化した言葉についての質問については、間違った読み方でも市民権を得ているものは否定できないとしている。平気でら抜き言葉を使った原稿を送ってくるぼくの会社のライターさんには、ぜひともこの相談室と密に連絡を取ってほしいのだ。

鋭い視点に立った質問や感性豊かな疑問には「月間賞」として毎月1人に粗品を贈呈しているそうで、「『お』と『を』に発音の違いはあるのか」(答えは「ほとんどの地域で違いはないが、四国の一部で違いがある」)が受賞したのだ。ぼくが訊いてみたいのは、「病に侵される」と「病に冒される」のどっちが正しいか、ということ。新聞用語(朝日新聞や時事通信などの用字用語より)では前者を使うように指示されているけど、辞書(岩波の国語辞典など)では後者が正しいとなっているのだ。

日々の生活で日本語の使い方に迷ったり疑問を持ったら、この相談室に質問してみては? 岡本教授も「大学機関に相談したくても敷居が高そうで相談しにくいという声もあり、地域に開かれた大学づくりの一助になれば―という思いも込めて企画した。ぜひ気軽に質問を寄せて」(千歳民報より)と言っているし。質問や問い合わせのメールはnihongo@do-bunkyodai.ac.jpまで。質問の際は、冒頭に氏名(匿名可)、職業、年齢、性別、市町村名を記載することを忘れずに(電話番号、詳細な住所はプライバシー保護の観点から入力しないようにとのこと)。一般常識に関する質問や「あくびをしながら『あー』と言うと健康にいいって本当ですか?」、「何か即効性のある日本語の呪文について教えてください」などといった質問には応じられないとのことなのでご注意を。また、現在非常に混雑しているそうで、回答までに1週間前後要するのだそう。

それにしても、なぜ日本語学科なのに外国語学部なんだろうと思っていたら、学科のサイトにちゃんと書いてあったのだ。「国語ではなく、一外国語として捉えることで、様々な日本語の観察法を学びます」。うーむ、なるほど。

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