トヨタがGMから富士重工株取得、世界一も視野に。

2005/10/06 05:56 Written by コジマ

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トヨタ自動車が5日、「レガシィ」などのスバルブランドで有名な富士重工業の筆頭株主になることを発表し、事実上傘下に収めたのだ。同時に富士重工は米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を解消。これによりトヨタの生産拠点が増え、「2010年代の早い時期にGMを抜いて世界一になる」という目標の第一歩となりそうなのだ。

トヨタが取得したのは、GMが売却した富士重工全株20.1%のうちの8.7%(6800万株)。残りの株式は富士重工が市場から買い戻すとのこと。GMはスズキ自動車やいすゞ自動車との業務提携もしており、この2社は小型車、ディーゼルエンジンという利点がそれぞれあるのだけれど、富士重工車は水平対向エンジン(BOXERエンジン)を採用しているため、GM打ち出しているグループ内の他メーカーとのエンジンや車体の共通化によるコスト削減に見合わないために売却されたとみられている。今回の富士重工株の“移譲”は業績が悪化しているGMへの支援し、トヨタの最大の市場である北米での摩擦を回避するという見方が強いのだけれど、トヨタの木下光男副社長は「GMへの支援ではない」と強調しているのだ。また、富士重工の竹中恭二社長「お互いの自主性や独立性を守ったうえでの業務提携」としており、トヨタグループに入るわけではなさそう。

この提携で、富士重工のほうはトヨタの技術や販路を活用できるという利点はあるのだけれど、トヨタ側にも、軽自動車市場で6%のシェアを持つ富士重工とトヨタ傘下のダイハツ工業の提携で、この市場でトップのスズキに肉薄できるというメリットがあるのだ。また、現在トヨタが「プリウス」などに使っているハイブリット車用のニッケル水素電池よりも、先の見通しが明るい富士重工が持つリチウムイオン電池の技術が活用できるようになりそう。そして、「2010年代の早い段階でシェア15%を超してGMを抜き、世界一になる」というトヨタにとって、拡大路線を歩む宣言となったのではないだろうか。

さらに、自動車以上に将来につながる大きなメリットとして、航空機技術が挙げられている。大戦中、一式戦闘機(「隼」)や零式艦上戦闘機(「ゼロ戦」)のエンジンを産み出した中島飛行機が前身の富士重工は、現在も米ボーイング社の機体を製造したり航空自衛隊の戦闘機やヘリコプターを開発している(ちなみに、パトリオットミサイルもライセンス生産している)など、最先端の航空機技術を持っているそうなのだ。実際、米国では小型航空機の需要が拡大しているそうで、ぼくはまったく知らなかったのだけれど、ホンダはすでにこの分野での可能性をにらみ、自主開発の小型ジェット機の試験飛行を行っているそうなのだ。富士重工との提携でホンダに一気に追いつく考えなのかもしれない。それもいいけど、その空飛ぶ技術とクルマの技術を合わせて、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や映画「フィフス・エレメント」に出てくるような浮いて走るクルマを早くつくってほしいのだ。

「世界でポルシェとスバルだけ」といわれる水平対向エンジンは根強いファンが多いけれど、先述したように他のメーカーとの互換性が低く、現代の自動車工業の流れには即してないのかもしれない。業績好調なトヨタの傘下に入ることによって、独自性が守られるのはよいことなのかも。ぼくが最初に手に入れたクルマは「レガシィ」ということもあって、友達に「これ、故障してんじゃないの?」と言わしめた独特のエンジン音がいつまでも残ることを願ってしまうのだ。

ちなみに、富士重工の2005年3月期連結決算の売上高が約1兆4464億円だったのに対し、トヨタの同期連結決算の純利益は1兆1712億円(売上高18兆5515億円)。純利益が同業者の売上高とほぼ一緒とは……。うーむ、さすが世界2位の自動車メーカー。

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