都市のなかの音楽フェスティバル、サマーソニックを堪能 その3。

2005/08/20 08:59 Written by コジマ

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都市型ロックフェスティバル「SUMMER SONIC 05」の8月14日・東京会場に行ってきたので、ぼくが観たステージのレポートをお届けしているのだ。始める前に、この日のタイムテーブルはこちら、会場の地図はこちら 。 参照しながら読むと臨場感がわきます。では、つづきをどうぞ。

カサビアンのステージが終わり、そのままMARINE STAGEにいることに決めたぼくらは、セットチェンジの混乱に乗じて前へと詰めようとして3人ともバラバラに。ぼくは前から20列目(列とかないけど)くらいに出られたのだけど、ここでハタと考えた。先ほどのカサビアンのステージで興奮してミネラルウオーターを全部撒いてしまい、これからオアシスのステージが終わるまで水分の補給ができないではないか。日が暮れてきたとはいえ、真夏のスタジアムのなか。マリンスタジアムは潮風が強く吹き込むのが特徴だけど、これだけ密集していたら風が吹いてもまったく涼しくないのだ。うーむ、脱水症状にならないよう気をつけなければ……(どうやって?)。

●ウィーザー
1992年結成、94年デビューの米国を代表するオルタナティブ・バンド。メンバーは、メイン・ソングライターのメガネ君ことリヴァース・クオモ(ボーカル、ギター)を中心に、ブライアン・ベル(ギター)、マット・シャープ(ベース)、パトリック・ウィルソン(ドラム)の4人。セルフ・タイトルのデビュー・アルバムから、その独自の世界観を持った歌詞と米国らしい底抜けに明るいポップ・サウンドでダブルプラチナディスクを獲得。加えて、スパイク・ジョーンズ監督の2本のビデオにより一躍MTVのスターとなり、グラミー賞やMTVアワーズなどを受賞するという大成功を収める。しかし、翌95年発表のセカンド・アルバム「ピンカートン」が商業的に大失敗。失意のリヴァースは、97年に突然ハーバード大学に通い始めるが、追い打ちをかけるように、精神的支柱であったベースのマットが、サイド・プロジェクトのバンド、レンタルズに専念するために脱退。リヴァースはすっかり自信をなくしてしまい、バンドは活動休止へ。3年後の2001年、それでも作曲を続けていたリヴァースがメンバーに声をかけ、ベースにマイキー・ウェルシュを迎えて活動を再開し、30分弱のサード・アルバム「ザ・グリーン・アルバム」、翌年には4枚目の「マラドロワ」と立て続けにリリースするも、入ったばかりのマイキーが脱退。また活動休止状態になる。それから3年になる今年、5枚目となるアルバム「メイク・ビリーヴ」を引っ提げて、3回目のサマソニ参戦なのだ。
と、こんなに長い紹介文を書いたものの、ぼくは「ザ・グリーン・アルバム」しか聴いたことがないのだ。しかもちゃんと知ってるのは「フォトグラフ」1曲のみ。こんなんでライブ観ていいのかな、なんて思っていると、メンバーが登場し、1曲目から「フォトグラフ」を演奏。いきなり手駒を出し尽くした感があったものの、押すな押すなの総モッシュ状態でさらに前に。おお、リヴァースがこんな近くに! ホントに自信なさそうな顔してる(笑)。前説で言われた通り、みんな指で「W」の形つくってかざす。それにしてもさすがウィーザー、壮絶なモッシュ状態にもかかわらず、女の子のファンが多い。そして、みんな男顔負けの激烈なモッシュをかましているのだ。すげーと思いながらも、知らない曲ばかりで今いちノリ切れず、これでは女の子にもまれに来たようなものだ、ヘンタイになってしまう! と焦っていると、「アイランド・イン・ザ・サン」、「ハッシュ・パイプ」など「ザ・グリーン・アルバム」の曲がかかり、ようやっと演奏に集中できたのだ。最後は「サーフ・ワックス・アメリカ」で締め。「あ! キムタクだ!」的なノリでリヴァースを間近で見られてよかったけど、前方に集まったディープファンのみなさん、こんなライト(にもほどがある)ファンが前に詰めてすみませんでしたのだ。野球をキャッチャーで1試合こなしたくらいの疲労感。最後まで持つのか?

ウィーザーのステージが終わると、女の子はほとんどが退場。恵みの水撒きの最中に、さらにさらに前へ。開始前にもかかわらずすごい密集状態。全身汗みどろの野郎どもに囲まれてオアシスの登場を今か今かと待ったのだ。ところが、開始時間の7時半になっても一向にメンバーが出てこない。すわ、楽屋で兄弟喧嘩勃発か? と不安に思っていると、「みなさーん、ごめんなさーい! 機材の調子が悪くて開始できないんです。メンバーはやる気マンマンなので、もうしばらく待ってくださーい!」というMARINE STAGEの前説を担当しているSascha(J-WAVEの朝の番組「CHALLENGE SPORTS」のナビゲーター)の声が。どうやら、ステージのモニターへの接続が思うようにいかないみたいなのだ。Saschaの声もマリンスタジアムの放送設備を使ってようやっと流している状態。しかし、汗だくが密集しているため涼しい風がほとんど役に立たず、限界寸前の状態。ステージ前方からごっついセキュリティーに助け出される人もちらほら。機材トラブルなんて段取り悪すぎなのだ。

●オアシス
言わずもがなだけど、とりあえずご紹介を。ロック界の問題児、ノエルとリアムのギャラガー兄弟を中心とする、英国が世界に誇るモンスターバンド。現在の編成は、リアム・ギャラガー(ボーカル)、ノエル・ギャラガー(ギター、ボーカル)、ゲム・アーチャー(ギター)、アンディ・ベル(ベース)、ザック・スターキー(ドラム)。ちなみにザック(元ビートルズのドラマー、リンゴ・スターの息子)はザ・フーの正式メンバーのため、オアシスではサポートメンバーとなっている。ギャラガー兄弟は信仰しているといえるほどビートルズに傾倒しており、はじめローディー(裏方さん)を務めていた兄・ノエルのつくる曲は、その流れを汲んだ壮大で哀愁漂う英国の古典的ポップソング。そこに弟・ノエルの激しく、間延びした歌声(ジョン・レノンとジョニー・ロットンを足したようといわれた)が乗ることによって、最強のロックンロールになったのだ。現在活動を停止している犬猿の仲のブラーなどとともに、「ブリット・ポップ」という一大ムーブメントをつくり、セカンド・アルバム「モーニング・グローリー」がビートルズの持つ英国アルバム売り上げ枚数記録を30年ぶりに更新するという快挙を遂げ、サード・アルバム「ビー・ヒア・ナウ」で米国、ひいては世界での人気を不動のものにする。しかし、ギャラガー兄弟の傍若無人な態度や行動、発言の数々は絶えることなくゴシップ紙を賑わせ、インタビューでは支離滅裂の発言と放送禁止用語を連発。さらに、ノエルの、ラモーンズのジョニー・ラモーンばりの独裁にリアムが反発。兄弟喧嘩やメンバーチェンジが絶えず、常に解散の危機にさらされているのだ。今年5月に発売された6枚目のアルバム「ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース」は、そんなバンド内の問題を顧みて、全員が作詞・作曲を担当。ノエルの「『モーニング・グローリー』以来の出来」という言葉にたがわず、日本のオリコンチャートで30年ぶりの英国バンド1位を獲得したのだ。
さて、朝の山手線以上の状態なうえに全身びっちょりでまだ汗が止まらないなか、40分待ってようやくメンバーが「ファッキン・イン・ザ・ブッシーズ」に乗って登場。もう少しで倒れるところだったのだ。しかし、それまで不満の塊だった観客も、一気にご機嫌にヒートアップ。すかさず「ターン・アップ・ザ・サン」「ライラ」とニューアルバムの曲が続く。みんな聴き込んでいるいるようで、リアムと合唱状態。耳元で叫ぶように歌いまくる青年に辟易したり(笑)。この時点でぼくは前から5列目くらいの位置(列とかないけど)にいたので、メンバーの姿がよく見える。タンバリンを持った手を後ろに組むリアムの独特のスタイルを生でこんな間近で観られるなんて、辛抱した甲斐があったのだ。「ブリング・イット・オン・ダウン」、「モーニング・グローリー」、「シガレッツ・アンド・アルコール」と続き、間奏でリアムはタンバリンを口にくわえたり、頭の上に乗っけたり、仁王立ちして観客を見回したり。どうやらご機嫌はよいようなのだ。その後、ノエルのボーカルによる「インポータンス・オブ・ビーイング・アイドル」や「ア・ベル・ウィル・リング」などのニュー・アルバムの曲に盛り込まれて演奏された「リヴ・フォーエヴァー」、「ロックンロール・スター」は涙ものだったのだ。ヒートアップするバンドの演奏に合わせて、客席からは気分が悪くなって退場する人が続出。リアムが退場者の一人と目が合い、「あれ? お帰りっすか?」という表情の後に「おつかれさま」と深々とお辞儀するパフォーマンスには思わず微笑んでしまった。しかし、ぼくも感動とともに体力の限界を迎える。もう手を挙げることすらできず、押されるままに変わる立ち位置。「部活を思い出すんだ。汗が出なくなるまで練習した部活を……」と自分に言い聞かせていると、いつの間にか前から2番目に。おお、前方は比較的涼しい。しかも、一番前は女の人だからとっても見やすいし。こんな最高の位置で「ワンダーウォール」を聴く。リアムまで5メートル。ぐおおお、まさかこんなところまで来られるとは! 次の「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」では、外野スタンドまで埋め尽くしたスタジアム全体で大合唱。こんなに疲れているのに、こんなに感動したのは初めてなのだ。そして、最後は、お約束のザ・フーのカバー曲「マイ・ジェネレーション」で残る力すべてを振り絞ってジャンプ。メンバーがステージを去ると花火が上がり、今年のサマーソニックは終了したのだ(前すぎて花火見られなかったけど)。しかし、あと2〜3曲演ってたらぼくも退場していたところ。まさに、天国と地獄を同時に味わったのだ。

外に出ると連絡を取ってないのに、バラバラになった友達と偶然合流。スタジアム出口近辺の屋台では、冷やすのが追いつかないほど飲み物が売れており、みんながどれだけ脱水症状だったかを物語っていたのだ。仕方ないので生温かいポカリスエットをガブ飲みし、タバコを吸おうとしてびっくり。ポケットに入れていたタバコは汗で箱ごと全滅していたのだ。反対のポケットに入れていたタイムテーブル表もびちょびちょ。Tシャツはいくら絞っても足りないほどに。Nくんが替えのTシャツを余分に持っていたので借り、屋台で食事。オムハヤシの美味いこと美味いこと。この時間、幕張メッセで起きたスタッフ弁当食中毒事件でメッセのほうは救急車が何台も来ていたみたいだけど、マリンスタジアムにいるぼくらはまったく気づかなかったのだ。

ラーズやティーネイジ・ファンクラブなどを観られなかったのが心残り(オアシスの開演が遅れたことを考えると、ラーズをかなり観られたのではないだろうか)だけど、リトル・バーリーやブロック・パーティーなどの新人バンドやオアシスをあの位置で観られておおむね満足。心地よい疲労感とびちょびちょのTシャツ、大きな感動など多くの思い出を手に入れて、ぼくらは幕張を後にしたのだ。

おわり

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