2000年に始まった「サバイバー」を引き金に、アメリカのテレビ界で隆盛を誇っているリアリティ番組。Narinari.comでも
過去コラムで話題にしたことがありますが、その人気たるや、まったく留まるところを知りません。
一般の視聴者が何らかの課題に挑戦する「チャレンジ型」や、セレブとその家族の生活を赤裸々にドキュメントする「のぞき見型」番組と大きく2つのカテゴリがこのリアリティ番組にはあるんですが、その前者タイプで昨年の秋から始まった
「スーパー・ナニー」("Supernanny" 米ABC系)と
「ナニー 110番」("Nanny 911" 米FOX系)にウォール家は今、とてもハマりまくっているのです。
このふたつは「子育てに悩む両親の家庭に、養育のプロ『ナニー』が1週間滞在して、しつけのノウハウを伝授する」という内容の1時間ドキュメント。ナニーとは、欧米などで「幼児保育のスペシャリスト」を指す職種名です。イギリスでは特にステイタスのある職種として認識されており、プロのナニーを育てるために、ノーランド・カレッジと呼ばれる伝統ある養成校も存在します。
そしてこの「スーパー・ナニー」と「ナニー 110番」に登場するナニーたちも、イギリスの上流階級などで長年経験を積んできたプロ中のプロ。彼女たちが毎回新しい家庭を訪れて、「トイレ・トレーニング」、「夜更かし」、「偏食」といった問題から、「甘えん坊」、「暴力的」といった子供の情緒トラブルにいたるまで、いろいろなケースに対して親に助け舟を出すのです。これが子を持つ親からみると、役に立つアドバイスが沢山あって、思わず感心してしまいます。
でもナニーの実践的ノウハウだけでは、番組として面白くありません。やっぱり視聴者参加型のリアリティ番組で、何に対して人々がハマるかというと、「一般人なのにどっか突飛」な出演者たちのキャラクターや、彼らが抱える「不幸」の度合い。まさにそれだけで視聴率が決まるといっても過言ではないでしょう。
実際に「ナニー系」番組にも毎度、一体どこから探してくるやらとんでもない悪ガ……いや、個性的な子供達が登場。しかもその親たちも「子離れが出来ない母」や「養育に非協力な父」と、いろいろな問題を抱えてるんですね。そこをナニーは鋭い目で見抜いては、彼らにも厳しく「しつけ」の言葉を投げかけるのです。そこで大体お約束のように、ナニーと両親のどちらかが対立。彼らからすると
「子供を変えるために来てもらったのに、なんで私達のほうが変わんなきゃいけないの!?」
といった感じなんでしょうが。
でもまあ毎回、最後にはナニーと家族も和解し、子供達も新しい親のアプローチを受けて、おりこうさんに近づいていくのです。最後は絶対にハッピーエンドなのが多少(?)番組制作者による編集の力って気もしますが、それでも確かに効果のありそうな子育てノウハウをいろいろ伝授してくれますし、アメリカ人の大好きな「家族の価値」を再認識させてもくれる。
何はともあれ、アメリカ人も日本人も「子育て」ってのは大変な仕事。特に核家族がメインの文化では、なかなか「お手本」が得られなくもあります。そんな時にエンターテイメントとして観られる「養育マニュアル」があれば、有難く感じる人も多いでしょう。それがこれら「ナニー番組」の人気の秘密なのではないでしょうか。