お湯のない生活。

2004/11/05 04:36 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


休日の朝、草野球の試合の用意をしていると、「お兄ちゃん、お湯が出ないよ!」、同居している妹が洗面所から叫んだ。ウチの妹はボケである。炊飯器の内蓋を付けないままスイッチを入れ、シューシューとすごい音が鳴り出したため「どうしよう、壊れちゃった」と泣いてるくらいボケなのだ。どうせ給湯器のスイッチを入れてないで慌ててるだけだろうと行ってみると、給湯パネルのスイッチを入れて水を出しても燃焼サインがつかず、しばらくすると電源が消えて液晶に「E06」という文字が点滅する。「暗号か? 暗号なのだな?」と呟いてると、妹に「それは不具合のサインだよ! 説明書見なよ!」と突っ込まれてしまった。そんなの分かってらい、だいたいボケのくせに突っ込んでないやい、なんてぶつぶつ言いながら、入居以来初めて出す「説明書ファイル」のなかから給湯器の説明書を見てみたのだ。

「E06 給湯側炎(燃焼)検出系統の不具合」と出ている。何のこっちゃ。「運転スイッチをいったん『切』にし、再度『入』にして表示が出なければ正常です」とも書いてある。しかし、切って入れても表示が出るんだから、よく分からないけどこれは「正常ではないです」になる。すわ、ガスを止められてるのかと思ったけど、コンロの火は点く。となるとガス屋さんに修理を依頼しなきゃならないのだけれど、野球の集合時間が迫っていた。妹に修理依頼の電話をするように頼むと、彼女も出かける時間が間近に迫っているという。仕方なく、先に帰ってきたほうが電話するということで、急いで野球に向かったのだ。

よく晴れた空の下、試合はクソボロに負けてしまった。とにかく打てない。打ってもカラダが重くて走れない。ショート深くに球が飛び、どう考えても間に合うはずの打球なのに、「もう食べれないよお」とか言い出しそうなデブのように足がマゴついてアウトになってしまった。あまりの足の遅さにみんな目を点にして「な、何あれ…」「お、遅くない?」なんて口々に言っていた。7回までキャッチャーをやると足が動かなくなってしまったのだ。体力は確実に落ちている。

落胆したまま家に帰ってガス屋さんに電話すると、とりあえず管理人に聞いてくれと言われた。しかし、休日は管理人さんはいないのだ。ということは、明日、ヘタしたら土曜日までの3日間風呂に入れないことになる。しかも今日は野球で汗+泥の最悪の条件である。でも、大丈夫。ぼくらには銭湯があるではないか。そう、銭湯があるんだ。もう大丈夫、もう大丈夫…、なんて思ってたらいつの間にか眠りに就いてしまっていた。そして、目が覚めると夕方の6時を過ぎていた。今日は6時半からバンドの練習もあったのだ。急いで飛び起き、ベタベタボディも気にせず着替えて渋谷に猛ダッシュ(光速)で向かった。

8時半に練習が終わってビールを軽く飲んでいたのだけれど、早めに、遅くとも10時には帰ろうと思っていた。すると、「ハバネロタバスコ」に目をつけたギターのヤツが、余ったピザに大量にかけて「これ罰にしてゲームやろうぜ」と言い出した。ピザ以上の厚みになるまでかけた「ハバネロタバスコ」の威力は抜群で、ゲームに負けたドラムのヤツが食べると顔がみるみる真っ赤になり、汗を大量に噴き出しながら悶絶していた。その面白いこと面白いこと。面白すぎてゲームが止まらない。面白すぎて気づくと11時を過ぎていた。

帰ると当然のことながら銭湯は閉まっていた。閉まった銭湯の前でため息をついた。実家で入ろうとおもったけど、帰りのタクシー代2000円を考えるとバカらしくなる。自転車で行こうとしたけど、帰ってきたらまったく同じベタベタ状態になるので却下。サウナもバカらしいし、かといって近所に風呂を貸してくれるような友達もいない。悩んだ揚句、すばらしいアイディアを思いついた。ヤカンでお湯を沸かして水で埋めながら少しずつ使っていけばいいんだ。すごいぜオレ。世紀の大発見に気をよくして鼻歌を鼻ずさみながら沸いたお湯をヤカンから風呂桶に注いでいると、「あっ、あたしもそれで入ったよ。2回沸かしたほうがいいよ、足りなくなるから」と妹に言われてしまった。

ちょっとは水でいけるかな? なんて思っていたのだけれど、とんでもない。足にかけた瞬間に自分の考えが間違っていたことに気づいた。これでは修行になってしまう。ちょびっとずつちょびっとずつ、ぬるめのお湯をだましだまし使ってカラダ、顔、髪の毛と来たところで沸いたお湯がまだ少し残っていた。「こりゃ、イケる」そう思ったぼくは、おもむろにリンスを取り出して頭に塗りたぐった。これが間違いの元だった。リンスはなかなか落ちない。残りのお湯をかなりぬるめに埋めてもぜんぜん足りなくなってしまった。かといってリンスを残したままでは、深刻な砂漠化に悩むわが頭皮に致命的な損害を与えかねない。心を決めて修行に入っていくしかなかった。

お湯がないだけでこんなに苦労するなんて、思ってもみなかったのだ。はじめからなければどうってことないのだろうが、いつもあるものがなくなると非常に困る。台風や地震の避難者たちの気持ちが少しだけ分かった気がするのだ。結局、給湯器は翌日の夕方に直りましたとさ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.