本作は、過酷な試練に立ち向かった父子の百年の物語。旧海軍士官の父、海上自衛隊員の息子を通し、戦争とは何か、日本人とは何かを問う壮大なスケールの長篇小説だ。昨年8月から「週刊新潮」での連載がスタートしたが、第1部完成直後に山崎さんは入院してしまい、そのまま帰らぬ人となったため、未完の遺作となった。
しかし、連載は山崎さんが亡くなった後も続行され、先月で終了。この第1部と、山崎さんが残していた結末までのあらすじが本作に収められている。
「この日本の海を、二度と戦場にしてはならぬ!」という主人公の言葉に、「戦争の時代に生きた自分だからこそ書かなければ」と言われたという山崎さんの作家魂が感じられる同作。この作品をきっかけに、山崎豊子作品への注目が再び高まりそうだ。