先日カナダで開かれたマラソン大会で、女性の1位になった34歳のランナーが話題を呼んでいる。総合でも10位に入った彼女は、もともとハーフマラソン部門に登録して出場。ところが、ハーフとフルマラソン参加者が同時スタートだったせいもあってか、彼女は途中でコースを間違えてしまい、結局初のフルマラソンに挑戦する形となったそうだ。それでも完走してみれば、3時間11分48秒の好タイムで女性部門の優勝者となり、来年4月に行われるボストンマラソンへの出場権も獲得したという。

カナダ紙オタワ・シチズンやモントリオール・ガゼットによると、この女性は9月22日にオンタリオ州で開かれたマラソン大会に出場した、メレディス・フィッツモーリスさん。今まで「20マイル(約32キロ)以上走った経験がない」彼女は、10月20日に行われる米デトロイトマラソンで初めてフルマラソンに挑戦しようと計画していた。そこで彼女は、先頃オンタリオ州で開かれた「The Run For Heroes Race」というマラソン大会にトレーニングのつもりで参加登録。朝7時20分スタートのハーフマラソン部門に出場した。

そして当日、フィッツモーリスさんは同時スタートのフルマラソン参加者とともにレースを開始。腕時計を見ながら自分で決めたペースに従い、順調に走っていた彼女だったが、レース最終盤のゴール手前で大きな落とし穴が待っていた。「1時間28分でゴールする予定」で走り続けた彼女は、ゴールが近くなってきて自分で決めた基準をクリアしたい強く思い過ぎたのか、頻繁に「時計を見ていた」そう。加えて「ヘッドホンをして」周りの声が聞こえなかったことも仇となり、彼女はハーフマラソンのゴールに向かう道へ入らず、フルマラソンのコース上を快走。「どこがゴールか分からなくなった」彼女が、自転車で並走していた大会職員に「どこで曲がるのか」と聞いた時、初めて既にゴールを通り過ぎていたことに気付いたという。

42.195キロを走るのは未知の世界だっただけに、途中でコースを外れようかとも思ったというフィッツモーリスさん。しかし、この大会がボストンマラソンの予選会を兼ねているのも知っていた彼女は、走りながら職員に「完走したら記録が認められるか」「ボストンマラソンの予選選考資格が得られるか」と質問した。職員は大会責任者へ問い合わせに向かい、そのまま走り続けていた彼女は「ゴールで待つ友人が不安に思っていないか」「ここでフルマラソンを経験して、デトロイトでやる気をなくさないか」など、いろいろ考えながら答えを待っていたそうだ。

結局、戻って来た職員から「完走したら記録を認める」と聞かされ、最後まで走り切る決意を固めたという彼女。落ち着いて自分の順位を確認すると、前には9人の男性が走っているだけで、女性トップであった事実を知ったのも勢いをつけたようで、初めての距離を走り続けていても、終始「本当に気分は良かった」という。そして快走し続けた彼女は総合10位、女性1位でゴール。走り終える間際は「シュールな感じ」を受けていたという彼女も、友人と顔を合わせてから感動や達成感から涙を流し、自転車の職員ともハグをして完走を喜んだそうだ。

フィッツモーリスさんは10月には予定通りデトロイトマラソンに出場。さらに出場権を掴みとった来年のボストンマラソンにも参加する予定だ。
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