英放送局BBCや英紙インディペンデントなどによると、問題になっているのは、ロンドン中心部で建設が進められている37階建ての高層ビル。「建物内のオフィスを外の光から保護」するため、途中から高くなるにしたがって外へとせり出していく形をしたビルは、その特徴的な形と時期が災いとなり、最近、周辺の一部で問題を引き起こすようになっていた。
この時期に昇る太陽の角度も要因の1つとなり、凹型となったビルへ降り注いだ太陽の光は、下を走る通りの各所へと局地的に集中。その1つが、男性がジャガーを停めた駐車スペースにあたり、彼は「こんなことが起こるなんて思わなかった」と驚いたという。彼の場合は、ビルの建設会社から「946ポンド(約15万円)の修理費」を受け取ることができたそうだが、ほかにも付近にある店のカーペットが焦げたり、壁のタイルが割れたりするなどの被害が起きているとされ、問題は膨らむ一方だ。
問題のビルを設計したのは「ウルグアイ人の建築デザイナー」(英紙ガーディアンより)で、凹型の建物を設計したのは今回が初めてではなかった。米ラスベガスで2009年12月に開業し、やはり同様の問題を引き起こしたヴィダラホテルを設計したのも彼。同ホテルは左右に角度を付けて緩い弧を描くような57階建ての建物で、2010年9月にプールサイドのリクライニングチェアで寝ていた宿泊客の男性の体毛が突然焦げる被害に遭遇するという事故が起きている。原因は、ホテルの建物から反射した光が彼の寝ていた場所近辺に集まったためで、相次ぐ客からの苦情にホテルは反射光を“殺人光線”と呼び、窓に光を散乱させるフィルムを貼るなどして対策を取ったそうだ。
そして今回、ラスベガスと同じデザイナーが担当したビルで再び同様の問題が起きてしまい、英国のある建築専門家は「ロンドンでは設計初期段階でその問題が見落とされたようだ」と主張。残念ながら、反射光がもたらす影響について気が付く人がいなかったことも、今回の被害を招く要因になってしまったようだ。
付近への反射光の問題は1日2時間程度、太陽の角度が変わる数週間後まで続くと見られているが、調査を始めた建設会社ではロンドン市当局とも相談して、一時的な反射を防ぐ防護スクリーンをビルに設置。さらに市側は、反射光の強い影響が予想される地点にある、通り上の駐車スペース3か所の使用中止を決めたという。