インターネットを利用する人には、何でもすぐに調べられて便利な「Wikipedia」。ただ、誰でも編集者になれるとあって、非常に多くの事柄についてカバーされている一方で、情報の正確性については利用者が見極める必要がある。英語版のWikipediaでは、昨年末に掲載情報の調査を行ったユーザーの指摘によって、17世紀に起きたとされるインドの戦争に関するページが「いたずらで作られた」と判明。全くの作り話と認められ、削除されるケースがあった。

米ニュースサイトのアイオワシティ・オウルやデイリー・コーラーなどによると、このほど作り話と判明したのは、2007年7月4日に作成されたページ「Bicholim conflict(ビコリム戦争)」。4,500語もの文量で書かれていた説明では、この戦争は1640年から41年にかけ、植民地支配を目論んだポルトガルと、当時インドの大部分を支配していたマラータ王国との間で起きたとされていた。戦争の名前は「多くの戦いが繰り広げられた北インドの地域」から名付けられ、最後は「後にゴア州を統合するよう助ける」平和条約を結んで終結に至ったとしている。

この情報に疑問を持ったのは、米ミズーリ州のユーザーShelfSkewedさん。昨年12月に目を付けて調査を行ったところ、出てくるソースや言葉についてオンライン検索をしても、結局「記事自身に辿り着くだけだった」と言い、客観的な情報が一切ないと判明した。さらに「慎重な検討と若干の研究」を行ったShelfSkewedさんは、このページが「賢く精巧ないたずら」で作られたと断定し、ビコリム戦争という史実自体が「一切なかった話」と判断。申し立てを受けて、Wikipediaは昨年12月29日に、ビコリム戦争のページを削除した。

現在、ハンドルネーム「A-b-a-a-a-a-a-a-b-a」という人物が作成者とまでは分かっているが、本人の身元や意図については不明のまま。ただ、インド西部にあるゴア州が1940年代ポルトガル領だった事実や、「ビコリム」という地名が現在も実際にゴア州に存在しているなど、作成者はインドの歴史に関してある程度知識があり、それを活用して執筆したようだ。

Wikipediaの関係者は、「いたずらは何も新しいことではない。作成者が狡猾になれば、見つけるのがもっと難しくなる」とコメント。利便性と信用性の狭間で、いたずらの書き込みへの対処が難しい問題であるとの認識を示している。間違った情報と判断するのはとても難しい問題ではあるが、利用者は得た情報が正確なものであるかを、常に疑うくらいの心構えを持っておくべきなのかもしれない。
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