この電球が取り付けられているのは、カリフォルニア州リバモアにある第6消防署。消防車などが並ぶ広い駐車スペースの奥に進むと、天井から長く伸びた取り付け口に、淡いオレンジ色の光を放つ話題の電球がある。現在の消防署内には多くの蛍光灯が照明として使われており、この電球が周囲を照らすという意味で役に立っているのかどうかはわからない。しかしたとえ照明の意味をなしていなくとも、いまや点灯し続けること自体に、消防署だけでなく街全体にとっても意味があるのだ。
米紙サンノゼ・マーキュリーによると、この電球が使われ始めたのは1901年のこと。リバモアの電力会社オーナーが、オハイオ州の電機メーカーが製造した電球を消防当局に寄贈し、管内の数か所の消防署を巡って「1976年」(リバモア市公式サイトより)に現在の第6消防署にやって来た。110年も点灯する電球は、消防署間の移動の取り外しの際もあるだろうが、「1903年の短い期間と1937年の1週間、それから1976年までの数回の停電」(英紙デイリー・テレグラフより)以外は、ずっと点き続けていると伝えられている。
この不思議な電球、これまでに米国内から数々の科学者たちがやって来ては、謎の解明に挑んできた。しかし、電球の百年祭実行委員長を務めたリン・オーウェンズさんによれば、「どうして点き続けるのか誰も分からなかった」そう。長寿の要因の1つは、60ワットのはずが「4ワット分しか光らない」という点にもあるようだが、それでも110年も現役となれば誰もが驚きを隠せないはずだ。
リバモアの街ではこの電球が「Centennial Light Bulb(百年電球)」と呼ばれる名物にもなっており、電球の公式サイト(http://www.centennialbulb.org/)まで存在している。サイトでは10秒毎に写真が更新されるライブカメラも用意され、世界からタイムリーに電球の様子を見られる仕組みだ。「世界一寿命の長い電球」としてギネス・ワールド・レコーズにも認定されているだけに、リバモアでは100年目などの節目ごとに電球を祝う式典も数々開催してきた。
そして使用開始から110年となる今年は、6月18日に「110年祭」を実施する予定。第6消防署では正午から午後4時まで市民を集めた参加費無料のパーティーを開き、消防設備の展示や映画の上映、ライブイベントを行うほか、バースデーケーキも用意して電球の活躍を祝うという。110年も働き続けてなお衰えを知らないこの電球、リバモアの住民たちのためにも、まだしばらくは頑張ってもらいたいところだ。