この男性はオハイオ州コロンバスで生活をしているテッド・ウィリアムズさん。彼が注目を集めるきっかけとなったのは、地元紙コロンバス・ディスパッチが1月3日付で配信した動画記事だ。1分半あまりの動画は、同紙記者が車で市内の道路を疾走している場面からスタート。すると、中央分離帯の芝生に立つウィリアムズさんに遭遇する。
「私は神に贈られた声を持っている」と書かれた段ボールを手に、車に近付いてくるウィリアムズさん。記者の誘いに応じてすぐさま話し出す彼の声は、あたかもラジオのDJのように落ち着いた低音で、口調は音楽のように淀みない。それもそのはず、手にした段ボールに記されたメッセージには「元ラジオアナウンサー」との文字も。そんな彼が、なぜ路上生活を送る羽目になったのだろうか。
コロンバス・ディスパッチ紙によると、ニューヨーク・ブルックリン生まれの彼は1980年代にオハイオ州の放送学校に通った後に、同州やノースカロライナ州のラジオ局でアナウンサーとして就職。しかし、窃盗や薬物使用の罪で1990年に刑務所行きを味わってから人生の転落が始まり、ほかにも不法侵入などを行って繰り返し警察の世話になっていたという。結婚していた妻とも1998年に離婚。7人の子どもたちも全員がコロンバス市内に住んでいるというが、もはや罪を繰り返す父親に手を差し伸べる家族はいなくなってしまったようだ。
この2年半は酒や薬物に溺れることなく、まともな精神状態になったと主張するウィリアムズさんは、コロンバス・ディスパッチ紙の取材に「普通の生活に戻りたい」と話している。せめて1万8,000ドル(約150万円)の年収を得て、落ち着いて生活できるアパートに住み、食事を作りたいと語っていた彼の人生は、動画記事掲載ですぐに一変した。
投稿されたYouTubeの再生回数は急上昇しているだけでなく、全米メディアも彼の声に注目。米放送局NBC、CBSなどが番組に出演させたほか、MTVやESPN、地元ラジオ局にNFLのチームなどがナレーションやアナウンサーの仕事をオファーしているという。わずか数日での劇的な状況変化に「スーザン・ボイルみたいだ」と興奮を口にしたウィリアムズさん。人生をやり直すまたとないチャンスを大いに生かし、再び幸せを掴んでほしいところだ。