この“猫村”があるのは、台北にほど近いホウトン(侯●/●は石へんに同)駅周辺。この辺りは以前、炭鉱の街として栄えていたが、産業の衰退と共に人口が減少し、現在は200人ほどが住んでいるという。対して猫の数は100ほどで、こちらは人の数を上回っているというわけではないが、それでも多くの猫が暮らす村として台湾の猫ファンが集まってくるそうだ。
“猫村”のきっかけを作ったのは、58歳の女性住民。英紙メトロによると、女性は9年前、猫を飼っていた近所の人が亡くなった際に5匹の猫をもらい受け、育て始めたらしい。すると、その猫たちが次々に子どもを産み始め、個体数の増加に一役買ったのだそう。現在ホウトンにいる100匹ほどのうち、実に「半分くらい育てている」とも話しており、少なくとも50匹程度は女性が面倒を見ているようだ。
炭鉱が廃れ活気を失っていた村は、いまや休日ともなれば猫目当ての観光客が押し寄せる日々に。こうした変化は住民も嬉しいようで、猫に関するさまざまなお土産も販売され、観光客の人気を集めているという。また、ホウトンの猫たちにはボランティアも協力、食料の調達や獣医による世話も受けられるようになっている。
ただ、人気スポットとなったことがすべて良い結果を招いたというわけでもない。中国情報サイトの中国経済網によると、メディアでホウトンの様子が報道されたのをきっかけに、観光客と共に猫を捨てていく人も出現。以前よりも2割ほど猫の数が増え、これにより猫の食料や医療面のコストが増大したため、地元行政府は「捨て猫対策」に追われている。
現在では、猫を捨てた人に3万〜15万台湾元(約8万〜40万円)の罰金が科されるそうだ。猫好きにとっては楽園の場所かもしれないが、育てられないからと部外者が捨てていくのは筋違い。ホウトンの猫が今後も幸せに暮らせるよう、住民と観光客で温かく育てて欲しいところだ。