このボランティア教師は今年42歳になるドイツ人のエッカルト・ロエベさん。1999年から広西チワン族自治区の農村で貧しい子どもたちの世話をしながら、英語やドイツ語、美術、音楽、自然科学などを10年間にわたり教えてきた。
エッカルトさんは教師の資格を取得しておらず、勉強を教えているのもすべてボランティア。教育関連書の翻訳業などで収入を得ていたが、それも寄付していたという。
そんなエッカルトさんがブログを始めたのは2001年のこと。教育関連書の翻訳文や子どもたちと触れあう様子、日々の生活から学んだ研究成果などを更新していた。
今回の突然のブログ閉鎖について、エッカルトさんは「私は中国人ではありません。外国人が管理すべきではない問題に関係し、一部の人たちの自尊心を傷付けてしまいました。私が留守児童(出稼ぎで両親が家にいない子どもたち)を管理すべきではないのです」とつづったエントリーを更新している。また、メディアへの露出が増えたことで自分への注目が集まり、ストレスを増加させたことも一因だという。
実際、エッカルトさんは2009年に一度テレビ番組の取材を受けており、「西欧の雷鋒」(※雷鋒は中国人民解放軍の模範兵士。数々の奉仕活動を行った)として話題を呼んだ。その後、雑誌の表紙なども飾るようになり、そうした生活に少なからずストレスを感じていたとしても不思議ではない。
エッカルトさんは今回のブログ閉鎖はあくまで自分の意思によるものであることを強調しているが、ブログの最後には「関連部門の要求により私はここに表明します。『私は正式なボランティア資格及び教師の資格を取得しておりませんでした』」と、半ば懺悔じみた一文も。この言葉をそのまま受け取れば、やはり地元政府関連部門から圧力がかけられた可能性は高い。
この一件に関して、中国のポータルサイト「新波網」には7,000件近いコメントが付き、「確かに就業証や教師の資格はないかもしれない。でも彼は中国の農村に多大な貢献をしてくれた」などと、惜しむ声が数多く上がっている。また、「エッカルトさんがたびたびメディアなどで中国の教育問題や留守児童問題に触れてきたことが今回の措置につながったのではないか」との憶測も。中には「これこそ中国」と、政府を批判する意見も見られる。
現時点では、エッカルトさんはブログ閉鎖とともに帰国するだろうと中国の各メディアが伝えている。しかし、彼は1997年にも中国の就業証を取得できずに一度中国を離れ、2年後に再び戻って来たことがあるため、仮に今回帰国したとしても、またいつか中国に戻ってきてくれるのではないかと期待する声もあるようだ。