英南西部サマセットに住む86歳のジャック・ハリスさんは、毎年1つのジグソーパズルを家族からプレゼントされ、それを組んでいくのが日課になっていたという。数か月をかけ、いつも春までには完成させていたハリスさんだが、2002年にもらったパズルはそれまでにない大仕事だった。
息子トレヴァーさんの嫁イブさんからクリスマスにもらったのは、19世紀の油絵を5,000ピースのパズルにしたもので、完成すれば1辺1.5メートルにもなる作品。妻の手も借りながら作業を始めたハリスさんだったが、あまりの難しさにそれまで通り春までに終わらせられなかったどころか、1年経っても全くゴールにたどり着けなかった。
完成に向けて地道にパズルを続けたハリスさん夫妻。しかし、2004年に妻は他界してしまう。以降、黙々と作業を続け、気が付けば足かけ7年半もの時間が過ぎていた。
そしてようやく終わりが見えてきたとき、ハリスさんに悲劇が訪れる。せっかく時間と努力を積み上げてきたパズルのピースが、1個だけ足りないことに気が付いたのだ。家中を探しまわったハリスさんだが、どうしても最後の1ピースが見つけられず、パズルは4,999個のピースを組んだところでストップ。イブさんが飼っている犬が食べてしまったのか、家族に偶然捨てられたのか、紛失した原因は分からないという。
完成させられないと分かったハリスさんは、イブさん曰く「とてもがっかりしていた」(英紙デイリー・メールより)。簡単に諦められなかったハリスさんは、パズルを製造したファルコン・ゲームスに「スペアを提供してもらえないか」と問い合わせもしてみたそう。しかし、このパズルはすでに生産を中止しており、「最後のピースを提供するのは不可能」(英紙デイリー・テレグラフより)との回答で、ハリスさんの希望は潰えたかに思えた。
ところが、この話題が英メディアで広く伝えられると、状況は一変。ファルコン・ゲームスがパズルの設計図を見つけ出し、「無くなった1ピースを製造する」(デイリー・テレグラフ紙より)ことを決めたという。問題の1ピースはアッという間に作られ、5月17日に無念を伝える記事が出た後、2日後の19日には、ハリスさんのもとにその1ピースが到着。こうして挑戦開始から7年半を経て、ついに大作は完成した。
これにはプレゼントしたイブさんも大喜び。「彼は、完成したパズルをとても誇らしく思ってる」(デイリー・メール紙より)と語り、パズルにニスを塗って額に入れ、家に飾るそうだ。
ちなみに、大作を終えることができたハリスさんには、ファルコン・ゲームスから最後の1ピースと一緒に、1,000ピースのジグソーパズルもいくつか贈られた。ハリスさん失意から立ち直っていれば、パズルに没頭する日々が再び続くことになりそうだ。