公式サイトで発表された文書では、英国防省は「50年以上に渡り、UFOが英国に脅威をもたらし得るという証拠を示した報告はなかった」と言及。また、目撃された“何か”を明らかにする特別な能力はないとした上、「こうした調査には防衛に対する利益がなく、予算を不適当に使っている」と、財政上の観点から廃止を決定したことを示唆している。これにより、12月1日からは市民からの窓口となるホットラインとメールアドレスは無効化。「国防省はもはやUFO目撃の報告に応じず、調査もしない」そうだ。
英国の主要メディアがこの発表について伝え始めたのは12月4日頃から。国防省は公式サイト以外には情報を流していなかったようで、英紙デイリー・メールは「静かに中止された」と伝えるなど、これまで数多くのUFO情報を伝えてきた英メディアにとっても寝耳に水の発表だったようだ。
ただ、今回の発表に至るまでには、その前触れとも言える動きがあったという。デイリー・メール紙によると、2002年6月にUFO部門の人員を別の部門に異動させ、「年間4万4,000ポンド(約650万円)の節減に繋がった」そう。さらに今回の中止によって「年間5万ポンド(約740万円)の経費が浮く」(英紙デイリー・テレグラフより)との見方も出ている。大国の省庁の予算としてはそれほど大きな金額ではないが、世界的な不況の波が、「UFO部門の閉鎖」の一因になったようだ。
今回の発表について、専門家の間からは失望の声も聞かれる。シェフィールドハラム大学でジャーナリズムを教えているデイビッド・クラーク博士は、現実的な決定と理解を示しながらも、「(UFOという)面白い素材が喧騒に消されてしまうことになり残念」(デイリー・メール紙より)と語り、信頼できる調査機関の消滅によって、今後の目撃報告が“ただの話題”で終わってしまうことへの懸念を感じている模様だ。
1950年に発足した歴史あるUFO部門。世界のマニアも一目置く存在だっただけに、廃止の決定を残念に思っているのは英国民だけではないだろう。