中国の高級タバコの中で、日本人にも特に有名なのが上海煙草(集団)公司の「中華」だろう。「中華」が誕生したのは1951年のことで、数々の受賞歴を誇るとともに、政府中央の指導者たちから高評価を得た“お墨付き”タバコだ。価格はタールやニコチンの含有量、包装の仕方によってさまざまだが、1箱100元(約1,300円)を超えるものも存在している。また、同社が販売する「熊猫(パンダ)」は1956年に誕生し、中国の政治家トウ小平が愛したことで知られるタバコ。パンダが2頭描かれた可愛いパッケージとは裏腹に、価格はサイフ泣かせの1箱120元(約1,500円)となっている。
これら2銘柄だけでも、1箱300円前後のタバコを吸っている日本人にとっては驚きの価格だが、高級志向の強い中国には、さらに上を行く高級タバコがある。例えば、内蒙古昆明巻煙有限公司の「冬虫夏草」。「中華」同様、さまざまなバリエーションがあるが、高いものとなると1箱160元(約2,100円)とかなりの価格だ。また、広西中煙工業有限責任公司の「真龍」は1箱190元(約2,500円)、湖北中煙工業有限責任公司の「黄鶴楼」は1箱200元(約2,600円)、そして紅雲紅河煙草(集団)有限責任公司の「道」に至っては1箱230元(約3,000円)もする“超”が付く高級品。もちろん、これら以外にも高級タバコは存在しており、先述の「中華」の存在が霞むほどの数々の高級タバコが投入されているのが、中国のタバコ市場の状況だ。
こうした高級タバコが中国に数多く存在する背景には、中国の“面子”の文化が関わっている。中国では挨拶もかねて客人にタバコを差し出す習慣があり、そのタバコが高級であればあるほど、“面子”が立つと思われているのだ。中には自分で普段吸うタバコと、客人に差し出すタバコを使い分けている人もいるほどで、「友だちになってからビジネスが始まる」文化を持つ中国では、タバコは「ビジネスツール」と言っても決して大げさな表現ではない。
とはいえ、中国も世界の反喫煙化の流れに逆らうことはできず、こうした文化が少しずつ様変わりしているのも事実。客人が宴席でのタバコの差し出しを拒否することが無礼ではなくなりつつある今、中国の高級タバコが姿を消すのは、もはや時間の問題と言えるのかもしれない。